直通運転計画の着地点 | 京阪大津線の復興研究所

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大津線とは、京阪の京津線と石山坂本線の総称です。
この大津線の活性化策を考えることが当ブログの目的です。
そのために、京阪線や他社の例も積極的に取り上げます。

では、箱崎線と貝塚線の直通運転計画のもう一方の当事者である西鉄はどうでしょうか。西鉄と福岡市とは1997(平成9)年に直通運転の実現に向け検討することで合意しましたが、具体的な事業内容を発表しているのは福岡市側だけです。西鉄は公式には何の見解も示しておらす、より一層消極的であるとの印象も受けます。

 

西鉄は、鉄道事業の輸送人員および収入は大手16社の中で最下位ですが、バス事業の規模が大きく、子会社を含めると日本一の輸送量を誇ります。福岡市内でも、かつての市内線を継承した関係もあって多くの路線を運行しています。福岡市交通局がバス運営を行わず地下鉄に特化していることからも、その影響力の大きさが伺えます。

 

こうした背景により、西鉄が自社のバスからの転移を防ぐために地下鉄との直通運転を嫌がっているという噂が一部で囁かれています。しかし、貝塚線の輸送量はバスで代替できるものではなく、存続させる以上は鉄道事業を優先するのが普通の考え方です。

 

実際、西鉄は直通運転に備えた貝塚線の改良に対する投資を全く行っていないというわけではありません。連続立体交差事業によって高架化された貝塚線の名島―西鉄香椎間が将来の6両対応を考慮した構造になっていることは前にも述べましたが、当事業は地平時代と同等の設備を高架または地下に再現することを原則としており、その範囲内で補助金が出ます。

 

よって、地平時代に3両対応だった区間を6両対応にした分の追加費用は、西鉄が自己負担していることになります。

 

気になるのは、福岡市が3両編成の直通に方針を変更したにも関わらず、西鉄は依然として6両での直通を想定していることです。福岡市と西鉄のどちらが直通運転に消極的なのかは定かではありませんが、両者の意思疎通が不十分であることだけは確かです。

 

相互直通運転の場合、運転本数を増やさない限り車両の増備は不要です。相手側に直通する分だけ、自社(局)内にも相手の車両が入って来るからです。必要なのは増備ではなく、既存車両の改造または置き換えです。その点で、福岡市が3両編成の車両整備費を全て新車とする前提で50~70億円と見積もっているのは、初期投資を過大に評価するものであり不当です。

 

福岡市営地下鉄の箱崎線・空港線には、6両編成の1000系が18本、2000系が6本在籍しています。1000系は製造初年が1980(昭和55)年で、1997(平成9)年度から2004(平成16)年度にかけ大規模な更新工事を受けており、再改造を施すのは現実的でありません。3両編成化を行うなら、製造初年が1992(平成4)年の2000系を対象とすべきです。

 

一方、西鉄貝塚線には2両編成の600形が8本在籍していますが、製造初年が1962(昭和37)年と古いため、地下鉄への直通を行うか否かに関わらず、遠くない将来に置き換えが必要です。

 

何しろ貝塚線には、前身の宮地岳線時代も含め、西鉄に合併されてから1両も新車が導入されていないのです。600形も天神大牟田線からの転籍車であり、軌間の変更(1,435mm→1,067mm)に伴う改造と、アイスグリーンからオキサイドイエローへの塗り替えがなされていますが、実態はあくまでも中古車両です。

 

西鉄600形(大牟田線所属時)

 

西鉄側の車両置き換えが不可避である以上、箱崎線と貝塚線の直通運転は6両編成で行うのが適切です。それならば名島―西鉄香椎間の投資は無駄にならず、福岡市側も車両の3両編成化を回避できます。そもそも、利用客の増加が見込まれる直通運転を実施するにあたって、輸送力を低下させる短編成化をわざわざ行うほうがおかしいのです。

 

問題は、貝塚線の香椎花園前―西鉄新宮間が3両編成にしか対応していないことです。この区間にある5駅を全て6両対応にするには相応の投資が求められますが、それに見合うだけの需要があるかは疑問です。

 

貝塚線の旅客流動は典型的な郊外鉄道の様相を呈しており、起点の貝塚から遠ざかるほど利用客が少なくなります。それならば、西鉄香椎で系統を分断し、地下鉄直通列車は当駅で折り返して、600形による西鉄香椎―西鉄新宮間の区間列車に接続させれば良いのではないでしょうか。

 

西鉄香椎は島式ホームであり、対面で乗り換えができるため、貝塚で長い通路を歩く現在の状況より事態はかなり改善されます。

 

香椎地区は福岡市の東の副都心として整備が進んでおり、始発列車を設定する意義は大きいと考えられます。なお、地下鉄直通用の西鉄の新型車両は、将来の600形置き換えや分割併合運転なども視野に入れ、3両×2で編成するのが妥当です。

 

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