不可解な事業評価(1) | 京阪大津線の復興研究所

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大津線とは、京阪の京津線と石山坂本線の総称です。
この大津線の活性化策を考えることが当ブログの目的です。
そのために、京阪線や他社の例も積極的に取り上げます。

地下鉄箱崎線と西鉄貝塚線は、接続駅の貝塚で同じ島式ホームを用いて南北に向き合っており、両者の間にそれぞれの改札口が設置されています。ホーム幅は箱崎線のほうが広く、その線路の先端は貝塚線の横まで延びています。

 

共に軌間は1,067mm、直流1500Vの架線式電化であり、これだけを見ればすぐにでも直通運転を開始できそうに思えます。

 

問題は、地下鉄が20m4扉車の6両編成、西鉄が19.5m3扉車の3両(現在は2両)編成であることです。また、保安装置は地下鉄用のATC・ATOと西鉄用のATSの両方を搭載する必要があります。

 

2001(平成13)年度に予定されていた直通運転が頓挫したのは、西鉄が名島―三苫間の各駅のホームを6両対応にできなかったのが原因であるようです。

 

その後、香椎操車場跡地連続立体交差事業により、2004(平成16)年に名島―香椎宮前間が東側に移設の上で高架化され、名香野が西鉄千早に改称されました。隣接するJR鹿児島本線にも千早が新設され、乗り換えが至便になりました。

 

さらに2006(平成18)年には香椎駅周辺連続立体交差事業が完成し、西鉄香椎も高架化されました。これらの各駅は将来の6両対応を考慮した構造であり、地下鉄との直通運転のハードルは下がりました。

 

ところが、それでも計画は進展せず、2010(平成22)年にようやく福岡市が新たな直通案を発表しました。この案では、直通列車がどういうわけか3両編成に短縮されており、かつ相互直通区間を西鉄新宮―天神間と想定しています。車両整備費は9編成27両で約50億円と見積もられました。

 

地下鉄箱崎線が空港線と合流する中洲川端は、箱崎線が上、空港線が下の2段式になっており、それぞれ島式ホームと、姪浜方に引上げ線を備えています。空港線は全列車が姪浜方面へ直通しますが、箱崎線の列車は終日、約半数が当駅で折り返します。

 

表の空港線・箱崎線の乗降人員は、福岡市交通局発表の乗車人員を2倍にしたものです。姪浜の数値はJR筑肥線との直通客を含みますが、中洲川端の数値は空港線・箱崎線相互の直通客および乗換客は含んでいません。

 

 

その数値が示すように中洲川端はターミナルとしての利便性に欠けており、九州最大の繁華街である1駅先の天神までの直通列車増発を求める声が後を絶ちません。

 

よって、西鉄貝塚線との直通列車を天神まで乗り入れさせるのは理にかなっているのですが、不可解なのはここからです。

 

福岡市住宅整備局の交通対策特別委員会が2017(平成29)年1月25日に公表した「福岡都市圏における公共交通機関に関する調査」の資料によれば、「天神駅で折り返すためには、天神駅改良(ホーム新設)が必要」と述べられており、3両編成用のホームを新設するという前提で事業計画が評価されているのです。

 

そして、それに伴う費用の増加が、計画を先送りする根拠の一つとされています。しかし、福岡市営地下鉄は全駅が6両対応です。それより短いホームをなぜわざわざ増設する必要があるのでしょうか。

 

箱崎線の列車は約半数が天神を越え、引上げ線のある西新または姪浜まで運転されているので、これを貝塚線直通に仕立てれば良いだけのことです。読売新聞2010年1月14日号では、「天神以西は、赤坂や大濠公園などで利用客が多く、3両編成車両に向かないため、対象から外した」と報道されていますが、ならば天神から西新まで「回送」すれば済む話です。

 

大金を投じてホームを増設する理由など、どこにもないのです。連結両数を短くすることで事業費が高くなるなどという話は、古今東西聞いたことがありません。

 

私自身も、大学時代に京都市電の廃止理由の調査で市役所を訪れた際に、「路面電車を建設する際にも水道管やガス管を埋め戻すのに穴を掘らなければならないので、地下鉄と同じくらいお金がかかる」と言われて唖然としたことがありますが、今回取り上げた福岡市のケースはそれに輪をかけて悪質です。この種の論旨のすり替えで一般市民を煙に巻くのは、行政や企業が一番してはならないことであるはずです。

 

 

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