【旧客魔改造!?】JR東高崎支社・旧客7両改造は本当に必要だったのか

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JR東日本から昨日発表された旧型客車のリニューアル・ラウンジカー設置について、ファンの間ではネガティブな声が大きく上がっています。

そもそも何でこんなことになったのか、代案はなかったのか。JR東日本の胸の内を考察しつつ、私の考える高崎地区SL運行の問題点をお伝えします。

群馬地域のSL列車の変遷

以前は上野駅からEL&SL奥利根号などで毎週運行されていた群馬方面のSL列車。

デビューからD51 498とともに歩み続けて30年、大人から子どもまで多くの人がデゴイチを中心としたSL列車に足を運美、群馬県の鉄道網に新たな需要創出をした列車です。

登場当初は全国に先駆けたもので大きな話題となりましたが、運行期間中の変化として、列車名の変更や高崎駅発着への変更などの変化がありました。

運行体制としての大きな変化では、C61 20号機の復元によるSL2機体制の樹立があるほか、旧型客車を自動ドア設置・トイレの洋式化などの近代化改造を施工することで登板頻度向上をしたことが挙げられるでしょう。

これらの変化はここ10年くらいの動きですが、これを穿った見方をすればここ10年くらいは列車の運行維持について何らかのテコ入れが必要だと考えていたと推測しても差し支えがなさそうです。

群馬地域の求心力低下が背景か

SL運行に莫大な費用がかかっていて、どう頑張っても単体では赤字前提ということは皆さま周知のことかと思います。

500円ちょっとの申し訳程度の指定席料金ですが、東京方面からの往復の乗車券収入などの波及効果がなければとても運行維持をする価値はありません

上野発着の取りやめも経費削減と、新幹線利用促進で収益改善という背景からすれば妥当なところでしょうか。

そんな状況ですが、近年は高崎地区のSLの利用者数自体に苦戦している印象があります。

ファン層の利用が落ち込む12系の運転日や閑散期には空き席を散見することができますので、これは結構深刻な問題とも言えそうです。

一部のファンから、今回のリニューアルで座席定員が減ることへの指摘がありましたが、そもそも空き席が課題にあることが推測できるほか、デットスペースがあったオハニ36についてもなんとかしたいというのも納得でしょうか。

JR東日本としては、運賃収入にも期待出来る家族連れにボックスシートを埋めてもらいたいということを考えれば、一般利用者ウケを狙った車両にするのも納得ですし、現に後発のSLばんえつ物語号・SL銀河号ではそれらの仕様を全面的に押し出しています。

先発組かつ都心部から近いことから、とりあえず既存の古い車両をそのまま使っていただけでも利用があった群馬地域にも、一般利用者が乗って楽しい・求心力がある客車が欲しくなってきたという流れは至極当然とも言えそうです。

そもそも魅力って……?

以上のように、先発組としてどこか魅力が欠ける高崎地区のSL列車。

近隣に秩父鉄道・真岡鉄道・ばんえつ物語。さらに東武鉄道が新たに参加したSL密集地域で一番先発ながら、被写体としては牽引機と客車の組み合わせなどのバリエーションがあるものの、一般利用者としてはイマイチ。

JR東日本はこれらを課題に挙げていますが、私個人の思う改善点としては観光需要の創出・列車のプロモーションにありそうです。

まず、列車の目的地である水上・横川の魅力作りが足りないのではないかという点です。

かつては一大観光地であった水上地区ですが、バブル崩壊後の水上温泉の寂れ具合はなかなか見るに絶えません。

同じくバブル崩壊後の寂れつつあった隣県の鬼怒川温泉が、日光地区の需要回復余波やSL運行で再注目されている点を考えるとかなり対照的です。

象徴的な出来ごととしては特急水上号の定期運転終了・最ピーク期のみの臨時列車のみになっています。

一方の横川についても、SL利用者層と相性抜群な碓氷鉄道文化むら・駅弁トップクラスの知名度を誇る「峠の釜めし」があるものの、それくらいしか挙げられないためにそのまま折り返しのELぐんま よこかわ号で帰ってくる日帰り利用者がほとんどではないでしょうか

そんな碓氷鉄道文化むらの現状はご存知の通りかと思いますが、なかなかに深刻な状況です。

以上を考えると、日帰り需要の創出こそしているものの、これらと合わせた観光という観点からはなかなか合わせにくいSL列車と言えるのではないでしょうか。

日光地域の観光客を鬼怒川地区に引き込むという目的をしっかり具現化したSL大樹とこれまた対照的です。

地域と一体となった町興しにそこまで力を入れてこなかったツケが他社で魅力ある運行実現で鮮明になってきたと言わざるを得ません。

この視点はプロモーションの弱さについても指摘できますが、従来からJR東日本では国鉄時代同様に、各支社ごとに観光開発グループが沿線の宿の仕入れ・観光キャンペーンなどを行ってきました

鉄道現業経験者だったり、いわゆる総合職だったりの方々が該当しますが、地域振興のプロフェッショナル・専門性については疑問を投げかける声もあるかと思います。

以前発表された中長期計画では、これらの「着地仕入業務」と「観光開発業務」をJR東日本本体からびゅうトラベルサービスに移管することが明らかになっています。

これが子会社に丸投げではなく、専門性の高い子会社に権限を譲るという趣旨が果たせれば、今後は少し変わってくるかもしれません。

こういった広い視点で問題点深堀りを代々木の本社でしっかりとしていたら、旧客の改造以外の視点も出てきたような気もしますが、ひとまずはディスティネーションキャンペーン(DC)をきっかけに地域振興の働きかけが進むことを願うばかりです。

今後の活躍は限定的に?

これまでは、高崎支社所有の旧型客車たちは各地に貸し出され、レトロ〇〇号などの名称でJR東日本全域の様々なイベント列車の客寄せに大活躍してきました。

しかしながら、その活躍の場は徐々に減少しているように思えます。

他地域での活躍のなかでも定番列車であった只見線SL列車は、C11-325借り入れ共々ひっそりと運転を取りやめてしまっています(不通区間の存在も背景にありそうですが、既にC11-325が譲渡決定している以上は復活を望むのは難しいでしょう)。

そもそもJR東日本では、JR東海のような機関車牽引列車の一掃を目指しています。

従来のイベント列車の牽引には、各地で工事用臨時列車の牽引をメインに活躍している地元の電気機関車・ディーゼル機関車がエスコートを務める例が非常に多いものでした。

各地から少しずつ電気・ディーゼル機関車が減っていくと、SLと客車は元気でも移動手段がなくなってしまいますので、今後は他地域での運行が少なくなっていく可能性は捨て切れません

あらゆるイベント列車のなかでも他地域でのSL運行は相当な求心力がある存在ですので、何らかの方法で継続して欲しいところです。

最悪のシナリオ回避のための改造なら止むなしか

ファンにとっては原型放棄という動きは批判的なものが出てくるのは至極当然ですし、私自身もこのニュースは嬉しくないのが本音です。

ただ最悪のシナリオとして、先述のような乗車率の改善がない上で他地域への貸し出しが減ってくれば、いよいよ手持ち無沙汰な存在として運行削減・保有車両削減といった動きすらあるかもしれません。

これを回避するため、生き残りを賭けた「魔改造」であれば仕方ないとも言えるでしょうか。

そもそも乗客のニーズにあった車両をしっかりと作るのであれば、JR西日本の新造旧型客車(?)方式のような、一般利用者ウケをしっかり考えた車両作りが妥当なところですので、なんとも中途半端な存在となりそうな気もします。

それすら予算が付かない状況なのか、それとも新車を作って既存の旧客を捨てるくらいなら改造しようとなったのかは定かではないですが、せっかく貴重な車両にメスを入れる以上は利用率改善などの成果を願うのみです。

今回も独自視点の記事ですので、コメント欄や各種SNSでご感想をお待ちしています。

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