【寝台特急】サンライズ出雲・瀬戸はなぜ成功した?女子旅ブームも後押し

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JR東日本・東海・西日本・四国と4社を横断するという現在では異端な列車ながら、運行開始以来根強い人気を誇る「サンライズ出雲号」「サンライズ瀬戸号」。

日本国内最後の寝台特急となっていますが、今日も元気に運行しています。

生い立ちとともに、成功の秘訣に迫ります。

ブルトレ縮小時代の起爆剤として登場

今日も洗練されたイメージのあるサンライズ出雲・瀬戸号ですが、登場は意外と古く1998年(平成10年)となっています。

この列車は、当時2往復していた寝台特急出雲号のうちの1往復と、寝台特急瀬戸号を統合する形で登場しています。

車両は出雲号の車両整備を担っていた後藤総合車両所出雲支所をベースにしていますが、5編成のうち2編成はJR東海所有とされたほか、車両自体も西日本主導ながら共同開発・共同運行とJR東海も乗り気なプロジェクトでした。

従来のブルートレインが夜をイメージした青色だった一方で、「サンライズ」=日の出をイメージした明るい配色、そしてミサワホームが手がけた現代のビジネスホテル水準の内装で従来の客車運行とは一線を画す列車となりました。

なお、登場当初は乗車率が高い客車列車を高水準の列車で置き換えることで「ビジネス客」を主に取り込む狙いがありました。

気軽に乗れるのびのびシート(寝台特急料金不要)のほか、そのほとんどを個室とした編成構成が特徴的ですが、ビジネス客を主に狙っていたことが一番分かりやすい点としては、編成の大半が1名用個室となっているところでしょう。

北海道方面の豪華寝台特急「カシオペア号」では全ての客室が2名向けの個室となっている点とは真逆の構成ですね。

サンライズ号の特異性が長続きのきっかけ?

この2列車の特徴として、直流電化区間を走っていることのほか、九州ブルトレのような長区間でもなければ、急行銀河号のような短距離でもない、「中距離」クラスの寝台特急だったことが挙げられます。

これは、新幹線と直接ライバル関係になる路線ではない一方で、飛行機よりも優位に立てるという独自性を確立出来る絶妙な距離感です。

サンライズ出雲・瀬戸号登場時には九州方面を中心に多くのブルートレインが行き交っていました。

そのなかでこの2列車が新車投入として選定された上記の経緯が、その後の時代の流れの影響があるなかでも運転が続くきっかけとなりました。

また、電車方式としたことにより、JR東海が機関車列車を全廃、JR東日本もこれに追従する動きがあるなかでも気にせず走れているという点は当然ながら大きなポイントです。

天災にも負けずに今宵も走る

長距離列車の宿命として、自然災害などの大幅な遅延を受けやすいという欠点があります。

最近では2018年(平成30年)夏に中国地方の豪雨で出雲編成の長期間の運休を余儀なくされたほか、2019年にも複数回大幅遅延による新幹線振替・途中駅運転打ち切りを経験しています。

また、冬場には伯備線の豪雪の影響で大幅遅延となることもしばしば存在します。

こればかりは寝台特急ならではの課題となっていますが、それでも運転を行なっている経緯として、やはり出雲方面へのアクセスの看板列車であることが強いでしょう。

近年、縁結びのご利益にあやかるべく出雲大社参拝・観光を目的に「女子旅」の人気が急増しています。

特にツアーなどでは、下りはサンライズ出雲号・上りはやくも号と新幹線……というプランが組まれるため、車両を保有するJR東海・西日本にとっても稼ぎ頭の新幹線利用者も増やせるというメリットも存在します。

このサンライズ号が生き残っている要因としては、この列車を無くした場合、需要を飛行機に奪われる可能性が高く、新幹線利用を生めない=純粋に損失となってしまうことが他の寝台特急との大きな違いではないかと思います。

私も2010年ごろと2017年ごろの2回全区間を乗り通したほか、10回以上短距離利用をした経験がありますが、やはり年々出雲編成の女性客は増えているように感じます。

特にここ数年はインバウンド需要も重なり、かつての「移動」「ビジネスマン」といった寝台特急の客層とは大きく異なる雰囲気です。

現在は賑やかな客層となっていますので、食堂車や車内売店などを充実させても採算が取れそうなほか、1名用個室中心の構成がカップル・家族連れにちょっと不向きな列車ですが、登場時には想定されていなかった時代の変化ですので仕方ないところでしょうか。

一時期のブルトレ廃止ラッシュから、車両の減価償却とともに廃止されるのではないか……そんな鉄道ファンの予想も優勢だったこの列車。

近年では、車両を主に管理している後藤総合車両所にて少しずつ改造が加えられ、まだまだ活躍しそうな雰囲気です。

また、長年行われていた会社跨ぎの車掌越境乗務(米原以東・四国は従来から自社で担当)もJR東日本・東海が乗務員訓練を行なったことにより解消しています。

特に寝台特急乗務の名門、東京車掌区にとっては短区間ながら久々の寝台特急乗務が復活したことは嬉しいポイントですね。

登場当初、予備編成を使って運行されていた臨時の「サンライズゆめ号」(東京〜広島駅)や、「サンライズ瀬戸号」の松山駅延長運転は久しく運転されていない一方で、近年急増する需要に答えるべく「サンライズ出雲号」の臨時便の運行が始まったほか、「サンライズ瀬戸号」については金比羅山に向けて琴平駅までの延長運転も行われています

今日も多くの旅人の夢を乗せて、日本の大動脈を駆け抜けていきます。

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