【各地で保存】EF58形の保存機は10両も存在~彼らの生い立ちは?

スポンサーリンク

直流電化区間を牽引した電気機関車たちの中でも、未だに根強い人気を誇るEF58形電気機関車。

2018年の東京総合車両センター一般公開で61号機が展示されて大きな話題にもなりました。

保存機の数も電気機関車としては群を抜いている各機の生い立ちを振り返ります。

EF58形の略歴

現在残されている顔立ちの印象があまりにも強いものの、登場当初のみ武骨な従来の機関車のデザインで31号機までが製造されています。

後に現在の流線形のボディに交換され、余剰となったこのボディはEF13形電気機関車へ流用されたほか、製造途中だった32号機〜34号機は貨物用のEF18形電気機関車となり、欠番となっています。

寝台特急牽引機をはじめとする花形機関車だったことから、多くのファンが現在も存在する、国鉄機関車屈指の名作と言えるでしょう。

その功績から、現在も多くの保存機が各地に存在します。

車籍が残るのは61号機のみ

天皇陛下が御乗車されるお召し列車については、各地で最もコンディションの良い機関車が御料車編成を牽引するという運転方法が基本でした。

しかしこの61号機と予備機の60号機については、日本の機関車で唯一、製造時点から御召列車牽引機として製造されました。

基本構造は量産機と同じながらも、製造メーカー各社は部品精度などに細心の注意を払って赤字になったという逸話も存在します。

生まれながらにしてお召し列車を牽引するこの2機については、通常のぶどう色2号とは異なり、通称溜色(ためいろ)と呼ばれる深みのある茶色塗装が施されていました。

製造後は意外にも通常のEF58とともに運用されることが多くありました。

その後、60号機・61号機は同僚たちが引退していくなかでも残存していましたが、予備機だった60号機については1983年に解体となっています。

予備機という中途半端なポジションで生涯を終えた不運な機関車でしたが、それでもイベント列車などでは積極的に活用されていました。

一方の61号機は国鉄分割民営化の際にJR東日本へ89号機とともに継承され、お召し列車の他にも各種イベント列車、更には臨時特急踊り子号や寝台特急の東京~品川区の回送などのさまざまな活躍をしていました。

E655系お召し電車登場後はお召し列車牽引という花形運用こそなくなりましたが、今後も末永い活躍をする動態保存機になると誰もが思っていました。

しかしながら、鉄道車両の骨格である台枠への亀裂が発生してしまいました。

気軽に廃車にはできない機関車ですので、田端操車場~品川駅で単機回送を続けて電気部品の維持をしながら、保守方法の模索がされていました。

もうこの時期には故障原因から客車を従えての牽引は出来ない=機関車としての使命を失っている状況ながらも走らせていたという点がこのロクイチの特異さを物語っているでしょう。

やはり修理は困難とのことで、その単機での走行を最後に本線から退くこととなってしまったものの、かつてのお召し車両が厳重に保管されている東京総合車両センターにて

2018年(平成31年)には、保管をしている東京総合車両センターの一般公開で展示をしたところ、ファンのマナーの悪さが顕著であったことから、今後はロクイチだけでなく車両展示自体が行われません。

そして、東京総合車両センターの外に出てくる可能性は限りなくゼロに近いでしょう。

残念ながら、今後は当分の間は一般の目に触れることはなさそうです。

完全な静態保存機

89号機〜JR東に継承・博物館へ

1999年までは61号機とともに数々のイベントに登板。

廃車後は大宮総合車両センターに保管され、そのまま鉄道博物館開業にあわせてそちらにて展示されることとなりました。

イベント列車牽引・時代の変化にあわせて設置されたATS-Pなど、現役末期の姿でぶどう色化だけされています。

93号機も同様に保管されていたものの、博物館入りから漏れて解体されています。

150号機〜JR西日本のイベント列車を歴任

JR西日本に継承され、同じくレトロな外観のマイテ49-1客車などどともにイベント列車にて積極的に活用をされていました。

157号機〜飯田線で活躍・最後は工臨でひっそりと引退

157号機は同僚の122号機とともに、飯田線のイベント列車・工事用臨時列車で比較的最近まで稼働していた機関車です。

122号機は登場当初のぶどう色で、157号機は現役時代の主流だった青とクリームの国鉄標準色で、飯田線のトロッコ列車などのイベント列車を中心に活躍していました。

客車の廃車後は工事用臨時列車でひっそりと余生を送っていましたが、貴重な車両が風光明媚な飯田線をひっそりと走るということもあり、非公開の列車ながら多くのファンに注目されていました。

JR東海ではレール輸送をキヤ97系気動車に置き換えることで機関車列車を廃止することとなり、EF64やDE10といった後輩機関車とともに引退を迎えています。

157号機は に開業することとなるリニア鉄道館に収容されるため、ぶどう色へのお色直しが施された一方、先に運用を離脱していた122号機については、残念ながら廃車後は解体されています。

なお、この同じ形式は長期的に2両も保存しないという考え方は、一旦はリニア鉄道館に収容された300系や117系などにも引き継がれています。

一旦動態・静態保存されていた車両の解体は批判が付き物ですが、より多くの車種を保存するという観点から見れば現実的な対応とも言えそうです。

172号機〜お召し列車牽引の経歴も

172号機は群馬県横川の碓氷鉄道文化むらに静態保存されています。

EF58-60,61という専用機を製造したEF58系列において、それ以外の一般塗装機がお召し牽引機に抜擢されるという非常に特異な経歴を有しています。

こちらもお召指定機と同様のため色にする計画は叶わず、一般塗装機に銀差し塗装という特異な形態での抜擢で話題を集めました。

お召し予備機だった60号機がお召し指定解除されつつも、廃車になる前の1982年にお召し列車を牽引、その功績もあって現在も保存されているこの機関車はかなり幸運と言えるでしょう。

カットボディなどの保存機

36号機〜現役当時人気だった7枚窓

EF58の現在の外観のボディとしての新製車のうち、製造中だった旧来の設計のものを流用して製造された35号機・36号機。

特徴的な側面の窓が7枚設置されていた異端車のこの2機は、車体載せ替え前の雰囲気を感じられるため、現役時代からファン人気があった車両です。

ハーフボディとなって個人所有されたのち、鉄道車両のリサイクルを手がける北陸ロジスティックスに近年移送されています。

42号機〜なぜか番号が変えられていた保存機

前頭部のみが保存されている機関車ですが、過去には車番を44号機に書き換えられて展示されていた経歴があります。

JR西日本鷹取工場で保存ののち、大阪府の企業に引き取られています。

113号機〜JR貨物で保存

ここまで寝台特急牽引機という色合いの強さから、旅客会社での保存例が多かったEF58。

こちらの113号機はJR貨物の広島車両所にて前頭部+前台車が保存されていました。

しかし、こちらも近年、北陸ロジスティックスに移送されています。

144号機〜両エンドがカットボディに

機関車ならではの両エンドとも保存された例です。

1エンド側はさいたま市内、反対側の2エンド側は那須塩原市のレストラン「蒸気機関車」にて保存されています。

こちらのレストラン、鉄道が好きな親子連れに大人気のレストランですので、旅行の際のランチにおすすめです。

154号機〜人気の青大将色

JR東日本大宮総合車両センターにて保存されており、イベントなどで見ることができます。

青大将色でフルボディだった93号機が近年解体されたため、この塗装が見られるのもここならではとなります。

今後の動きは?

既存の博物館保存機については安泰と言えるでしょう。

車両の入れ替えがあって話題となったJR東海・リニア鉄道館ですが、コレクションの中でも希少価値が高い車両ですので、こちらも当面は大丈夫なのではないでしょうか。

そして、やはり気になるのはロクイチの今後ですね。

もはや除籍することも出来ずに厳重保管という状況が続いています。

その上で東京総合車両センターという唯一の展示機会を失っていますので、遠いいつか除籍されたのちの鉄道博物館入りに期待するしかなさそうです。

また、カットボディ機のうち、北陸ロジスティックスに移送された2機の将来も気になりますね。

関連記事はこちら

コメント

  1. 通りすがり より:

    旧ボディはEF18ではなく、EF13に転用されています。EF18は新製時からあの車体です。

    • ときぱて より:

      通りすがりさま

      閲覧・コメントありがとうございます。
      誤植のご指摘、ありがとうございます。
      車体載せ替えの流れについて加筆訂正しました。