(追記あり)なぜ停めない?南方駅 | 京阪大津線の復興研究所

京阪大津線の復興研究所

大津線とは、京阪の京津線と石山坂本線の総称です。
この大津線の活性化策を考えることが当ブログの目的です。
そのために、京阪線や他社の例も積極的に取り上げます。

読み:みなみかた

所在:大阪市淀川区西中島三丁目

開設:1921(大正10)年4月1日

1日乗降人員:42,242人(2015年)

隣駅:崇禅寺(1.3km) ←→(1.9km)十三

 

「なぜ停める?」「なぜ停めない?」の記事の執筆を始めた当初は、できるだけ全国から広く駅を選ぶように心掛けていました。ただ、停める停めないの問題を抱えた駅が均等に散らばっているわけではないため、結果的にはかなりの地域的な偏りが生じてしまいました。

 

会社別にみた場合、トップとなったのは、「なぜ停める?」に5駅、「なぜ停めない?」に3駅がエントリーされた阪急です。その中でも、停車駅としての扱いに最大の疑問を抱かざるを得ないのが、今回取り上げる南方です。

 

南方は阪急京都本線の駅です。駅のすぐ西側を地下鉄御堂筋線が越えており、同線の西中島南方とL字接続しています。西中島南方の2015(平成27)年の1日あたり乗降人員は62,145人であり、0.7km北の新大阪から地続きでオフィス街が形成されています。

 

宮脇俊三・原田勝正編著『JR・私鉄全線各駅停車』シリーズによれば、御堂筋線の駅も「阪急京都本線と同様に南方と称する予定だったが、高架駅のため立ち退きに協力した地域の西中島を駅名の候補としたところ、南方から反対され複合駅名となった」とのことです。

 

なお、阪急の駅は「みなみかた」ですが、御堂筋線の駅は「にしなかじまみなみがた」と濁ります。「南方」は正式な地名としては残っておらず、どちらが正しいのか今となっては判別できません。

 

それはさておき、駅としての南方の最大の魅力は、御堂筋線との乗り換え距離が短いことです。道路を渡らなければならないのが難点ですが、その道路は踏切で遮断されるので、実際の横断に支障はありません。同じく御堂筋線に接続する梅田とは比較にならないほど楽に乗り換えができます。

 

また、阪急京都本線は南方から十三を経由し、大きく西側に回り込んで梅田へ至りますが、御堂筋線は真っ直ぐに梅田へと南下します。このため、阪急の南方―梅田間が4.3kmなのに対し、御堂筋線の西中島南方―梅田間は2.8kmで、所要時間も2分程度短くなります。

 

これに乗り換え時間の差を含めれば、4分ぐらいの違いにはなるでしょう。御堂筋線は平日昼間時でも4分毎に走っているので、南方で乗り換えたほうが1本早くなる計算です。

 

阪急京都本線は某誌が騒ぐほど京阪間直通輸送の競争力は低下していないと考えられるものの、中間駅はJRに侵食されています。特に高槻市は、最盛期の乗降人員が1日8万人を超えていましたが、2015(平成27)年には64,824人まで減っています。対するJRの高槻は、約2倍の127,670人です。

 

JRの高槻―大阪間は21.2kmですが、阪急の高槻市―梅田間は23.0kmと長く、速度以上に所要時間の差をつけられていることがシェアの低下を招いています。十三経由で迂回していることがその原因である以上、南方での乗り換えをもっと奨励すべきです。

 

これは、京都本線全体の浮沈に関わる重要な課題です。淡路から千里線を介しての堺筋線直通運転も一定の成果を上げていますが、直通列車を梅田発着列車と別仕立てで設定しなければならないので、特に優等列車の本数に制約を受けています。その心配がなく、かつ堺筋線よりも便利な御堂筋線に連絡できるのが南方ルートの強みです。

 

しかし、現状では南方はその役割を十分に果たしているとは言えません。『平成25年版 都市交通年報』に記載されている2011(平成23)年11月8日(火)の交通量調査結果によれば、南方の乗降人員は41,161人ですが、そのうち十三方面の利用が17,513人(42.5%)です。

 

神戸本線・宝塚本線から新大阪・江坂・千里中央方面へは梅田ではなく南方で乗り換えたほうが便利なため、十三経由で流入してくる利用客が相当数存在するのです。河原町方面の利用は23,648人(57.5%)であり、十三方面より多いですが、絶対数としては京都本線のサブターミナルを名乗るには値しない水準です。

 

これを改善するには、昼間時の準急を急行に格上げするとともに、ラッシュ時の快速急行を南方に停めることが不可欠です。さらに、南方は淡路と異なり、乗車客と降車客が交錯する駅ではないので、通勤特急を停めることも考えられます。ただ、ホームが8両分しかなく、両端を踏切に挟まれていて延伸できないのがネックです。

 

阪急では最大10両編成が運転されますが、京都本線の場合は朝ラッシュ時の梅田行き快速急行3本と、その折り返し列車の合計6本だけなので、南方への停車を機に8両運転に縮小しても構わないのではないでしょうか。10両運転を継続するのなら、通勤特急にその任を譲るべきです。この場合は通勤特急の南方停車ができなくなりますが、それはやむを得ません。

 

もう一つの問題は、南方のメインの改札口が西端にあり、優等列車を停めれば今以上に梅田寄りの車両へ混雑が集中してしまうことです。このため、拙著【関西私鉄王国の復興計画(中巻)】 では、御堂筋線下の踏切を挟んだ西側に梅田行きホームを移設し、10両対応とした上で河原町寄りに改札口を設けることを提言しました。

 

ただし、地上駅のまま改良を加えるのは得策でないのも事実です。それならば、現状を逆手にとって、今後の増備車の梅田寄り2両をオールロングシート、中4両をセミクロスシート、河原町寄り2両をオールクロスシートとするのも一案です。この座席配置は、将来の神戸本線・宝塚本線との車両規格統一の際にも応用できる可能性があります。

 

なお、阪急の梅田は他社線との連絡に難があるものの、始発駅のため着席率が高く、かつ帰りがけに買い物ができるメリットがあります。これを生かすためにも、(西中島)南方―梅田間で阪急と地下鉄の定期券の相互利用を認めることが望まれます。実現すれば、朝ラッシュ時の速達性と夕ラッシュ時の利便性が両立し、「迂回ルート」の不利を克服できます。

 

(追記)

南方への停車列車を増やして京都本線の混雑を分散させれば「阪急梅田駅の不都合な真実」を部分的に解禁しても構わないはずです。

詳しくはリンク先でご確認ください。

 

(追記その2)

コメント欄にも記入しましたが、南方の航空写真を見ると、10両は無理でも9両分なら何とかホームを延ばせそうです。よって、例えば京阪のプレミアムカーのような座席指定車を京都側に1両だけ増結するなら、通勤特急の南方停車が実現できます。また、朝の快速急行3往復も8両または9両に短縮し、南方に停めたいところです。

 

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