なぜ停めない?深草駅・東福寺駅 | 京阪大津線の復興研究所

京阪大津線の復興研究所

大津線とは、京阪の京津線と石山坂本線の総称です。
この大津線の活性化策を考えることが当ブログの目的です。
そのために、京阪線や他社の例も積極的に取り上げます。

読み:ふかくさ

所在:京都市伏見区深草ススハキ町

開設:1910(明治43)年4月15日

1日乗降人員:11,946人(2015年)

隣駅:藤森(0.8km) ←→(0.5km)伏見稲荷

 

読み:とうふくじ

所在:京都市東山区本町十二丁目

開設:1910(明治43)年4月15日

1日乗降人員:18,696人(2015年)

隣駅:鳥羽街道(0.9km) ←→(0.9km)七条

 

深草は島式ホーム2面4線を備えた京阪本線の緩急接続可能駅です。2014年度から開始されたバリアフリー工事でホーム幅が拡げられ、京阪の最大連結両数である8連対応とするスペースも確保されました。ただ、急行が当駅ではなく隣駅の伏見稲荷に停車する関係もあり、実際に緩急接続を行うダイヤが組まれたことは歴史上一度もありません。

 

京阪本線は、特に京都市内の各駅が長期低落傾向を示していましたが、ここ3~4年でようやく回復基調に乗りました。2010(平成22)年から2015(平成27)年にかけての丹波橋―三条間の各駅の1日あたり乗降人員の変化をまとめると、以下のようになります。

 

丹波橋   53,466人→ 53,359人 (0.2%減)

墨染        8,052人→   8,393人 (4.2%増)

藤森      15,285人→15,623人 (2.2%増)

深草      10,978人→11,946人 (8.8%増)

伏見稲荷  5,825人→10,192人(75.0%増)

鳥羽街道  3,449人→ 3,691人 (7.0%増)

東福寺    14,359人→18,696人(30.2%増)

七条       14,348人→17,816人(24.2%増)

清水五条   6,833人→ 9,014人(32.0%増)

祇園四条  43,416人→51,555人(18.7%増)

三条        35,732人→40,454人(13.2%増)

 

これによると、近鉄京都線と接続する特急停車駅の丹波橋が微減しているほかは軒並み増加しています。最も増加率が高いのは伏見稲荷で、清水五条(旧名・五条)がこれに続きます。

 

乗降人員の絶対数は急行停車駅としては物足りないものの、伏見稲荷の増加率は驚異的です。伏見稲荷大社が「外国人に人気の日本の観光スポット」で第1位に選ばれるなどして、観光客が急増した影響が見てとれます。

 

祇園四条(旧名・四条)は平成に入った頃から、京阪の京都市内の駅の乗降人員トップの座を丹波橋に明け渡して久しかったものの、再逆転も視野に入る水準まで増加しています。三条も回復傾向が顕著であり、祇園四条とともに快速特急停車駅の体面を保っています。

 

急行通過駅で最も増加率が高く、かつ乗降人員が多いのはJR奈良線と接続する東福寺で、快速特急以下全列車が停まる隣駅の七条を上回っています。

 

近年は連絡改札口も設けられ、JRは「みやこ路快速」以下の全列車が停車します。しかし、京阪は通勤準急と準急(どちらも京都側では各駅停車と同じ)以外の優等列車は停まりません。これは深草も同じです。

 

東福寺駅の連絡改札口

 

東福寺からは京都駅までJR奈良線で1駅ですが、丹波橋との乗降人員の差が依然として大きいことからも分かるように、京阪沿線から京都駅へは現在も近鉄京都線がメインルートです。それだけに東福寺の潜在的な伸びしろは大きく、上位列車を停めればさらなる飛躍が期待できますが、ホームの長さが7両分しかないことがネックになっています。

 

東福寺のホームは両端を踏切に挟まれており、延伸は容易ではありませんが、将来的には拙著【京阪神間直通輸送の復興計画】で述べたように、交通量の少ない北側の踏切を閉鎖して8両対応に改築することが望まれます。

 

それまでの経過措置として、特急を深草に停め、各停(通勤準急・準急含む)との緩急接続駅を丹波橋からここに変更するのも一案です。現ダイヤは10分サイクルで、丹波橋の次の緩急接続駅である樟葉との間では特急と各停の停車駅差が4つしかなく余裕がありすぎるので、変更は容易です。

 

ただしその場合、快速特急「洛楽」を運転することが難しくなります。「洛楽」はかつてのノンストップ時代の特急同様に京橋―七条間無停車で、30分毎に土休日の午前中上りと午後の下りが5本ずつ、平日の午前中上りと午後の下りが2本ずつ設定されています。

 

「洛楽」は深草で各停を追い越すので、「洛楽」運転時には、特急は現状通り丹波橋で各停を抜くしかありません。その場合、祇園四条までの特急と各停の停車駅差は限度一杯の7つであり、仮に通過駅を増やしても徐行を強いられるだけです。当面、特急は現状通り七条に停め、東福寺の改良が叶った時点で停車駅を変更するのが妥当です。

 

一方、「洛楽」は七条を通過させ、深草に停めて緩急接続を行うべきです。東福寺への停車は必要ありません。京都駅へのアクセスを良くしても、京阪間直通輸送においてJRの新快速の牙城を崩す余地はほとんどないと考えられるからです。

 

京都駅へのアクセスが重要なのは樟葉や枚方市などの中間主要駅であり、それを担当するのは特急以下の種別です。紅葉のシーズンには東福寺への参拝そのものが重要な目的となりますが、東福寺駅大阪方面行きホームの手狭さを考えると、隣駅の鳥羽街道に客を分散させるほうが得策です。

 

そのためには「洛楽」が深草で各停と緩急接続を行うことが前提となります。伏見稲荷大社への参拝に対応する上でも、それが不可欠です。

 

深草は龍谷大学深草学舎の最寄り駅でもあり、平日はその通学需要も見込まれます。2019年10月1日には駅名も「龍谷大前深草」に改称されますが、名だけなく実を得るためにはやはり「洛楽」を停めるべきです。実現すれば「洛楽」の競争力と乗車率は確実に向上します。

 

逆に、それを行わなければJR奈良線経由で新快速に利用客が流れるだけです。四条・河原町経由で阪急の特急に「京阪間直通客」を奪われた苦い過去を忘れてはなりません。

 

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