なぜ停めない?東三日市駅 | 京阪大津線の復興研究所

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大津線とは、京阪の京津線と石山坂本線の総称です。
この大津線の活性化策を考えることが当ブログの目的です。
そのために、京阪線や他社の例も積極的に取り上げます。

読み:ひがしみっかいち

所在:富山県黒部市三日市

開設:1922(大正11)年11月5日

1日乗降人員:414人(2015年)

隣駅:電鉄黒部(0.6km) ←→(0.8km)荻生

 

東三日市は、電鉄富山と宇奈月温泉を結ぶ富山地方鉄道本線の駅です。隣駅の電鉄黒部からは0.6kmと近く、黒部市の中心市街地はこの両駅間に広がっています。市役所も両駅のほぼ中間にあります。あいの風とやま鉄道(元国鉄→JR北陸本線)の黒部駅は、電鉄黒部からさらに1kmほど西側に離れており、本来の市街地からは外れています。

 

電鉄黒部は当初「西三日市」と名乗っており、開業日も東三日市と同じでした。このことからも、両駅の地位はもともと並んでいたことが分かります。その傾向は長く続き、特急も一部を除き連続停車していました。

 

ところが、2015(平成27)年2月26日、東へ2.9kmの地点に新黒部が開設されると、特急は東三日市ではなくこちらに停まるようになりました。新黒部は、同年3月14日開業の北陸新幹線黒部宇奈月温泉駅と接続するために設けられた駅であり、従来の特急に加え、電鉄黒部―宇奈月温泉間で新黒部のみに停車する区間運転特急「くろべ」も設定されました。

 

2015(平成27)年の新黒部の1日あたり乗降人員は415人です。宇奈月温泉は1,058人であり、前年よりも378人増えました。その増加分の多くは新黒部からの直通客が占めていると推測され、北陸新幹線の開業効果がうかがい知れます。

 

一方、電鉄黒部の乗降人員は748人、東三日市は414人です。宮脇俊三・原田勝正編著『JR・私鉄全線各駅停車』シリーズに記載された1990年代初頭の乗降人員は、それぞれ1,990人・1,252人なので深刻な減少ですが、これは富山地方鉄道全体の傾向であり、両駅のみが極端に減っているわけではありません。

 

ここに見出される僅かな希望は、東三日市が特急停車駅から外されてもなお、新黒部と同等の乗降人員を保っていることではないでしょうか。加えて、電鉄黒部との差がそれほど開いていない点にも注目したいところです。

 

拙著【各駅停車がローカル線を滅ぼす】で主張したように、ローカル線では駅の統廃合を積極的に行い、集客力を高めつつスピードアップを図ることが基本的な姿勢として求められます。ただ、東三日市のように長年特急停車駅としての実績を重ね、相対的に見て一定の乗降人員がある駅は、あえて通過や廃止の対象にしなくても良いのではないでしょうか。

 

富山地方鉄道本線では、あいの風とやま鉄道(元国鉄→JR北陸本線)とは別に独自の拠点駅を設けている例が他にもあります。(新)魚津に対する電鉄魚津、滑川に対する中滑川がそうであり、いずれも魚津市と滑川市の本来の市街地に近い立地条件です。新魚津と電鉄魚津には特急が連続停車しますが、中滑川には現在も滑川を差し置いて特急が停まります。

 

旧国鉄では、乗客の利便性よりも運転上の都合を優先して駅の位置が決定された例が少なからずあり、このため中心市街地を素通りするようなケースが存在するのです。その一因は、国鉄の多くの路線が蒸気鉄道を発祥としていることにあります。

 

これに対して、加速力や登坂力に優れた電車を当初から運行していた私鉄は、駅の位置を柔軟に決めることができました。例えば、近鉄名古屋線の津新町や西鉄天神大牟田線の新栄町は、並走するJRには駅がないものの、津駅や大牟田駅よりも本来の市街地に近く、それぞれ急行停車駅と特急停車駅になっています。

 

JR化後に改善がなされた例には、奈良線の六地蔵があります。曲線上に狭い島式ホームを持つ新設駅ですが、京阪宇治線の同名の駅よりも醍醐地区へのアクセスが良く、快速も停まるようになったため、京阪とのシェアを逆転するまでに成長しています。

 

また、旧国鉄の特定地方交通線を引き継いだ松浦鉄道西九州線は、商店街を越える高架上のカーブ区間に佐世保中央を開業させました。ただ、既存の中佐世保からわずか0.2km であり、かつ乗降人員は佐世保中央が大きく上回っているので、中佐世保は廃止が妥当です。

 

話を富山地方鉄道に戻すと、東三日市は中佐世保と異なり、現在もそれなりの地位を保っています。ここは、ローカル駅としては例外的に、駅の存続を前提として特急停車を復活させるべきだと思われます。

 

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