なぜ停める?なにわ橋駅・大江橋駅 | 京阪大津線の復興研究所

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大津線とは、京阪の京津線と石山坂本線の総称です。
この大津線の活性化策を考えることが当ブログの目的です。
そのために、京阪線や他社の例も積極的に取り上げます。

読み:なにわばし

所在:大阪市北区中之島一丁目

開設:2008(平成20)年10月19日

1日乗降人員:2,539人(2015年)

隣駅:天満橋(1.0km)←→(0.6km)大江橋

 

読み:おおえばし

所在:大阪市北区中之島二丁目

開設:2008(平成20)年10月19日

1日乗降人員:6,003人(2015年)

隣駅:なにわ橋(0.6km)←→(0.5km)渡辺橋

 

なにわ橋と大江橋は、京阪電気鉄道京阪本線の天満橋から分岐する中之島線の駅であり、渡辺橋・中之島とともに2008(平成20)年に開業しました。当初、中之島線は1日あたり8万人の平均乗降人員を見込んでいましたが、実際には約3万人に留まりました。

 

中之島線の施設は、京阪ではなく第三セクターの中之島高速鉄道が所有しています。平成22年度『鉄道統計年報』によれば、京阪は中之島線の営業権の対価として、年間24億円の線路使用料を中之島高速鉄道に支払っています。

 

一方、朝日新聞2009年11月12日号によれば、京阪中之島線の2009年度上半期の増収効果は約4億円、1年換算で約8億円です。よって、赤字額は年間で推定約16億円(1日あたり約438万円)にも達します。

 

2015(平成27)年11月10日の旅客流動調査による各駅の乗降人員は、なにわ橋2,539人・ 大江橋6,003人・渡辺橋10,025人・中之島8,871人、合計27,438人です。

 

2011(平成23)年11月1日は、なにわ橋3,323人・大江橋7,708人・渡辺橋9,414人・中之島14,121人、合計34,566人でした。渡辺橋が微増である以外は軒並み減少しており、赤字額はさらに拡大していると考えられます。ちなみに、なにわ橋の乗降人員は、大津線を除く京阪線全駅の中で最低であり、文字通り「都会の中のローカル駅」です。

 

中之島線の利用が低迷する原因は、「接続の不便さ」に尽きます。なにわ橋と大江橋は、それぞれ地下鉄堺筋線の北浜と御堂筋線の淀屋橋の200mほど北にありますが、一度地上に出ないと乗り換えはできません。それならば従来通り京阪本線の北浜と淀屋橋を利用したほうが便利なので、中之島線を使う理由がないのです。

 

2015(平成27)年11月10日の京阪本線北浜の乗降人員は35,437人、淀屋橋は107,326人、合計142,763人であり、なにわ橋と大江橋の合計値8,542人の16.7倍にも達します。

 

なにわ橋と北浜、大江橋と淀屋橋で定期券の相互利用が認められているにもかかわらずこういう結果を招いており、中之島線の存在意義そのものが問われています。中之島線発着の優等列車はダイヤ改正のたびに淀屋橋発着に戻されていますが、それも当然です。

 

中之島線の各駅は、優等列車の停車の是非を云々する以前に、「作るべきでなかった」というのが現時点での正しい評価です。

 

ただ、一縷の望みと言うべきか、2017(平成29)年3月、南海の新今宮とJR難波から西本町・中之島を経て北梅田に至る「なにわ筋線」の整備について大阪府・大阪市・JR西日本・南海の4者が大筋で合意しました。開業の目標は2031年春とされています。

 

これが実現すれば、関西空港と京阪沿線との結びつきが強まるだけでなく、南海沿線と阪和線沿線から通勤客の流入が期待できます。現状では、中之島線の各駅は1,307億円の建設費に見合った役割を全く果せていませんが、立地条件そのものが悪いわけではなく、いずれも大阪の都心に位置しています。

 

よって、中之島経由での潜在的な需要は小さくありません。特に南海沿線からは競合ルートが相対的に弱いため、安定した利用が期待できます。

 

しかし、「なにわ筋線」開業予定の2031年までの間、中之島線を漫然と走らせたのでは、累積赤字が膨らみ続けることになります。中之島線は、「なにわ筋線」の開業を座して待てるような身分ではないのです。何らかの再建策を打ち出さなければ、内外に示しがつきません。

 

この問題を緩和するためには、拙著【関空アクセス鉄道の復興計画】で述べたように、なにわ橋と大江橋の営業を2031年まで休止して全列車を通過させ、その分だけ線路使用料を減額させて赤字幅を少しでも縮小すべきです。

 

休止期間中の営業は北浜と淀屋橋に任せれば十分であり、その場合、暫定的ながら中之島線の所要時間は約2分短縮されます。

 

一方、渡辺橋と中之島の2駅は、乗降人員の合計が1日2万人弱とはいえ、京阪の駅勢圏拡大にほんのわずかながら役立っています。ただし、停車列車は終日片道毎時6本程度で十分です。ラッシュ時には、京阪本線からの直通列車の一部を天満橋で打ち切って折り返すのが妥当であり、このことも経費の削減につながります。

 

 

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