なぜ停める?花畑駅・大善寺駅・大橋駅 | 京阪大津線の復興研究所

京阪大津線の復興研究所

大津線とは、京阪の京津線と石山坂本線の総称です。
この大津線の活性化策を考えることが当ブログの目的です。
そのために、京阪線や他社の例も積極的に取り上げます。

読み:はなばたけ

所在:福岡県久留米市花畑一丁目

開設:1932(昭和7)年12月28日

1日乗降人員:7,598人(2015年)

隣駅:西鉄久留米(0.9km)←→(0.6km)試験場前

 

読み:だいぜんじ

所在:福岡県久留米市大善寺町宮本

開設:1912(大正元)年12月30日

1日乗降人員:3,442人(2015年)

隣駅:安武(2.3km)←→(1.7km)三潴

 

読み:おおはし

所在:福岡市南区大橋一丁目

開設:1924(大正13)年4月12日

1日乗降人員:35,355人(2015年)

隣駅:高宮(1.4km)←→(1.8km)井尻

 

優等列車の停車駅が増加する理由はさまざまです。特殊な例として、トンネル工事の陥没事故の見返りとして急行が停車するようになった近鉄奈良線の石切駅のようなケースもあります(京都大学鉄道研究会雑誌No.23)。

 

そうした中で、どうにも納得のいかない経緯で優等列車が停まるようになった筆頭格とも言うべきなのが、西日本鉄道(西鉄)天神大牟田線の花畑駅です。花畑には長らく、区間運転の急行を除いて優等列車は停車しませんでしたが、2004(平成16)年10月17日、駅の高架化の完成と同時に、特急以下の全列車が停まるようになりました。

 

花畑は、特急運転開始当初からの停車駅である西鉄久留米から0.9kmと近く、特急を停めるに値する理由は見当たりません。駅の構造はどちらも島式ホーム2面4線なので、緩急接続も西鉄久留米に任せておけば済む話です。これは大善寺にも共通します。

 

乗降人員の増加などにより地元から優等列車停車の要望を受けていた駅が、高架化によるホーム延伸などを機に昇格した例は他社にもあります。その中にあって花畑が特殊なのは、高架化そのものの見返りとして特急停車駅に昇格した節があることです。

 

花畑の駅周辺は、連続立体交差事業によって高架化されました。当事業は踏切の除却を目的として行われるもので、主に道路予算が充当されます。久留米市は人口30万人以上の「C地域」に相当し、事業費の93%を国と市が折半します。

 

鉄道事業者の負担は残りの7%のみであり、一見すると手厚すぎる印象を受けますが、踏切の廃止が鉄道側ではなく道路側の流動を円滑化するために行うものであることを考えれば理解できます。

 

もっとも、鉄道事業者にも高架下のスペースを貸し付けてテナント料を得られるメリットがあるので、それに相当する金額を負担することになっているのです。

 

いずれにせよ、地元の都市が連続立体交差事業において相当額を負担したり、住民の立ち退きを促したり区画整理を進めたりするのは当然の義務であり、そこに「見返り」という発想が介在すること自体がおかしいのです。そんな理屈がまかり通るのなら、全国の高架化駅にはことごとく優等列車を停めなければならなくなってしまいます。

 

花畑への特急停車の表向きの理由は「西鉄久留米駅への一極集中を緩和するため」と説明されています。しかし、宮脇俊三・原田勝正編著『JR・私鉄全線各駅停車』シリーズによれば、1990年代初頭の西鉄久留米の1日あたり乗降人員は60,261人に達していました。これが、2015(平成27)年には33,555人まで減少しているのです。

 

一方、競合するJR九州の久留米駅の乗降人員は、2011(平成23)年の九州新幹線開業以降、増加傾向にあり、2015(平成27)年は1日15,316人です。依然として西鉄久留米が2倍以上の大差をつけていますが、相対的地位が下がっているのは確かです。この状況で必要なのは「一極集中の緩和」ではなく、むしろ逆であることは明らかでしょう。

 

花畑に特急を停めることが西鉄久留米の集客力低下につながる以上、見直しは不可欠です。ただ、久留米市内に限らず、近年の西鉄では特急の停車駅が次々に増やされています。

 

現在の西鉄の特急停車駅は西鉄福岡(天神)・薬院大橋・西鉄二日市・西鉄久留米・花畑大善寺・西鉄柳川・新栄町・大牟田ですが、このうち太字で示したのが後から昇格した駅です。

 

昇格駅の中で外せないのは、自社のバスや福岡市営地下鉄七隈線と接続しサブターミナル的な地位を築いている薬院だけであり、他の駅への特急停車は疑問です。最後に昇格した大橋は都心に近すぎ、遠近分離の原則を乱しています。

 

昼間時の所要時間も、2008(平成20)年3月22日の改正で最高速度を110km/hに引き上げ、西鉄福岡―大牟田間で表定速度77.4km/h ・58分の運転を実現したものの、その後は福岡市南区―春日市―大野城市の高架化工事と大橋停車により、上り62分・下り64分まで延びています。

 

ここは「京急方式」に基づいて、かつての特急停車駅プラス薬院にのみ停車する「快速特急」を設定して特急の大部分を置き換えるべきでしょう。そして、福岡市南区―春日市―大野城市の高架化工事完成時に、全線で55分の運転を期待したいところです。

 

 

書籍のご案内

【フリーゲージトレインの復興計画】 (詳細)
データ本:324円 (税込)/ 紙本:670円 (税込・送料別)

 

【北海道新幹線の復興計画】 (詳細)
データ本:270円 (税込)/ 紙本:594円 (税込・送料別)

 

[都会のローカル線の復興計画] (詳細)

データ本:324円 (税込)/ 紙本:756円 (税込・送料別)

 

【不都合な停車駅 36選】 (詳細)
データ本:324円 (税込)/ 紙本:864円 (税込・送料別)

 

【各駅停車がローカル線を滅ぼす】 (詳細)
データ本:324円 (税込)/ 紙本:715円 (税込・送料別)

 

【軌道系都市交通の復興計画(前篇)】 (詳細)
データ本:324円 (税込)/ 紙本:670円 (税込・送料別)

 

【軌道系都市交通の復興計画(後篇)】 (詳細)
データ本:324円 (税込)/ 紙本:670円 (税込・送料別)

 

【高加減速車と多扉車の復興計画】 (詳細)
データ本:324円 (税込)/ 紙本:670円 (税込・送料別)

 

【ダブルデッカーの復興計画】 (詳細)
データ本:324円 (税込)/ 紙本:715円 (税込・送料別)

 

【遠近分離ダイヤの復興計画】 (詳細)
データ本:324円 (税込)/ 紙本:715円 (税込・送料別)

 

【振子車両の復興計画】 (詳細)
データ本:324円 (税込)/ 紙本:670円 (税込・送料別)

 

【前面展望車の復興計画】 (詳細)
データ本:324円 (税込)/ 紙本:670円 (税込・送料別)

 

【関空アクセス鉄道の復興計画】 (詳細)
データ本:324円 (税込)/ 紙本:715円 (税込・送料別)

 

【鉄道ジャーナリズムの復興計画】 (詳細)
データ本:324円 (税込)/ 紙本:670円 (税込・送料別)

 

[転換クロスシートの復興計画] (詳細)

データ本:324円 (税込)/ 紙本:756円 (税込・送料別)

 

【「復興計画」の時刻表集(完全版)】  (詳細)
データ本:324円 (税込)/ 紙本:864円 (税込・送料別)

 

【寝台車と食堂車の復興計画(前篇)】  (詳細)
データ本:324円 (税込)/ 紙本:715円 (税込・送料別)

 

【寝台車と食堂車の復興計画(後篇)】  (詳細)
データ本:324円 (税込)/ 紙本:670円 (税込・送料別)

 

【鉄道デザインの復興計画】  (詳細) アンチ水戸岡派必読の書
データ本:324円 (税込)/ 紙本:756円 (税込・送料別)

 

【「関西鉄道」の復興計画(前篇)】  (詳細)
データ本:324円 (税込)/ 紙本:715円 (税込・送料別)

 

【「関西鉄道」の復興計画(後篇)】  (詳細)
データ本:324円 (税込)/ 紙本:715円 (税込・送料別)

 

【関西経済の復興計画(鉄道篇)】  (詳細)
データ本:324円 (税込)/ 紙本:715円 (税込・送料別)


【京阪神間直通輸送の復興計画】  (詳細)
データ本:324円 (税込)/ 紙本:756円 (税込・送料別)

 

【阪和間直通輸送の復興計画】  (詳細)
データ本:324円 (税込)/ 紙本:756円 (税込・送料別)


【関西私鉄王国の復興計画(上巻)】  (詳細)
データ本:324円 (税込)/ 紙本:605円 (税込・送料別)

【関西私鉄王国の復興計画(中巻)】  (詳細)
データ本:324円(税込)/ 紙本:670円(税込・送料別)

【関西私鉄王国の復興計画(下巻)】  (詳細)
データ本:324円(税込)/ 紙本:670円(税込・送料別)

【京阪大津線の復興計画書】
PDF版:税込999円(アフィリエイト率60%)
製本版:税込・送料込1200円 (A4・110ページ)



鉄道コム