読み:しゅくがわ
所在:兵庫県西宮市相生町五丁目
開設:1920(大正9)年7月16日
1日乗降人員:29,836人(2015年)
隣駅:西宮北口(2.7km) ←→(2.7km) 芦屋川
→(0.9km) 苦楽園口
読み:おかもと
所在:兵庫県神戸市東灘区岡本五丁目
開設:1920(大正9)年7月16日
1日乗降人員:32,132人(2015年)
隣駅:芦屋川(2.4km) ←→(2.2km)御影
岡本は阪急電鉄神戸本線の駅であり、阪神淡路大震災からの完全復旧に伴う1995(平成7)年6月12日のダイヤ改正で特急停車駅に昇格し、以来全列車が停車しています。一方、夙川は神戸本線から甲陽線が分岐する駅であり、2006(平成18)年10月28日のダイヤ改正で、特急以下の全列車が停車するようになりました。
阪急神戸本線の特急は戦前から高速運転で知られており、1937(昭和12)年以降の途中停車駅は十三と西宮北口のみで、阪神間を現在よりも速い25分で走破していました。これは第二次大戦によって中断されましたが、戦後に復活した特急は、一度たりとも戦前の水準に達していません。
その理由の一つは、神戸本線の待避可能駅が少ないことです。同線には14の途中駅がありますが、待避可能駅は園田・西宮北口・六甲の3つだけです。並行する阪神電気鉄道本線の梅田―神戸三宮間の途中駅は30を数えますが、待避可能駅が9つあるので、密度は阪急神戸本線の約1.5倍です。
ただし、神戸本線は駅の総数も待避可能駅の数も戦前から変わっていないので、これだけでは特急がスピードダウンした理由を説明できません。より直接的な原因は保安装置であるATS(自動列車停車装置)の導入です。
これにより、赤信号を無視しても自動的にブレーキが掛かるようになり安全性が大きく向上した反面、駅停車時に速度を信号に応じて段階的に落とさなければならなくなり、時間のロスが生じるようになりました。
通常、待避可能駅では待避列車の約1分後に追い越し列車が到着(または通過)し、追い越し列車の発車(または通過)の約1分後に待避列車が出発するのが最小限の運転間隔です。
また、停車駅が1つ増えるごとに所要時間は約1分延びます。よって、10分サイクルに列車を運転する場合、待避駅間の停車駅数の差が8つ以内であれば逃げ切りが可能です。
ただし、阪急神戸本線のように特急の速度が高く、ATSの制約が大きい場合には、いま少しの余裕が必要です。梅田―西宮北口間は特急と普通の停車駅差が5つなので支障ありませんが、西宮北口―三宮間がノンストップだった時代には停車駅差が7つとなり、特急は徐行を強いられ阪神間で28分を要していました。
その後のダイヤ改正で、平日昼間時の特急は六甲でも普通を追い越すようになり、阪神間の所要時間を26分に短縮しましたが、西宮北口―六甲間の停車駅差は4つだけなので、普通の待避時間が大幅に延びてしまいました。
これを解消すべく六甲での追い越しを中止し、なおかつ特急に生じる余裕時間を岡本停車に充てたのが大震災後のダイヤというわけです。
岡本が特急停車駅に選ばれたのは、並行するJR東海道本線の駅(摂津本山)に最も近接しているためと説明されています。地元の要望でも利用客の増加でもなく、余裕時間の割り当てという消極的な動機で特急停車駅に昇格したのは、岡本がほぼ初めてと言っていいでしょう。
至近距離のライバル駅に消耗戦を仕掛ける悪しき前例を作ったのも同駅であり、夙川や山本、JRの中山寺・さくら夙川、阪神の香櫨園など、多数のフォロワーを生んでしまう結果になりました。
何よりも悲しいのは、これだけの大抜擢を行ったにもかかわらず、岡本の2015年の1日あたり乗降人員が、快速停車などの対策を一切採っていないJRの摂津本山(46,120人)に水をあけられていることです。
阪急神戸本線と神戸市営地下鉄の直通運転が検討されている今、再び阪神間の速達性を向上させる気運が高まっています。岡本を特急停車駅から外し、不毛な「局地戦争」から手を引くべきでしょう。
神戸本線では2006(平成18)年に高速パターンATSが導入され、ブレーキ操作のロスが抑えられるようになりました。これに伴って10月28日に実施されたダイヤ改正では、同時に特急の神崎川―西宮北口間の最高速度が110km/hから115km/hに引き上げられました。
ただし、発想が「局地戦争」を脱することができず、JRのさくら夙川駅開設に備えて阪急も夙川に特急を停めたため、阪神間の所要時間は27分に留まっています。
『鉄道ピクトリアル』2010年8月臨時増刊号には、同改正のダイヤグラムが記載されています。それによると、特急の2分後に普通が西宮北口を出発し、次の特急の2分前に三宮に到着しています。
西宮北口の隣駅である夙川に特急を停めなければ普通の出発時刻を1分早めることができ、神戸三宮には現特急より3分早着します。夙川と岡本を通過させれば特急は2分速くなって普通の1分後に神戸三宮着となり、阪神間25分運転が視野に入ります。
ただ、欲を言えばあと1分程度の余裕が欲しいところです。前回述べたように、神戸本線では宝塚本線のホーム拡張と引き換えに中津を廃止するのが妥当であり、その場合は名実ともに「各駅停車」ではなく「普通」になります。それならば、中津以外の駅も通過して構いません。具体的には、三宮の1つ手前の春日野道を通過させるのがよいでしょう。
現在の昼間時には、山陽からの直通列車が30分毎に阪急三宮の本線上で折り返していますが、これを10分毎に改めた上で、かつての相互直通時と同様に六甲まで「各駅停車」として走らせれば、阪急の「普通」の春日野道通過をカバーできます。この場合、春日野道から梅田方面への利用が不便になるので、神戸三宮での特急への折り返し乗車を認めるものとします。
このダイヤならば特急の梅田―神戸三宮間25分運転は確実であり、さらに1分短縮できる可能性もあります。JRの大阪―三ノ宮間との比較では、新快速(下り21分・上り20分)には及ばないものの、快速(27分)と比べれば所要時間で優位に立てます。
書籍のご案内
【フリーゲージトレインの復興計画】 (詳細)
データ本:324円 (税込)/ 紙本:670円 (税込・送料別)
【北海道新幹線の復興計画】 (詳細)
データ本:270円 (税込)/ 紙本:594円 (税込・送料別)
データ本:324円 (税込)/ 紙本:756円 (税込・送料別)
【不都合な停車駅 36選】 (詳細)
データ本:324円 (税込)/ 紙本:864円 (税込・送料別)
【各駅停車がローカル線を滅ぼす】 (詳細)
データ本:324円 (税込)/ 紙本:715円 (税込・送料別)
【軌道系都市交通の復興計画(前篇)】 (詳細)
データ本:324円 (税込)/ 紙本:670円 (税込・送料別)
【軌道系都市交通の復興計画(後篇)】 (詳細)
データ本:324円 (税込)/ 紙本:670円 (税込・送料別)
【高加減速車と多扉車の復興計画】 (詳細)
データ本:324円 (税込)/ 紙本:670円 (税込・送料別)
【ダブルデッカーの復興計画】 (詳細)
データ本:324円 (税込)/ 紙本:715円 (税込・送料別)
【遠近分離ダイヤの復興計画】 (詳細)
データ本:324円 (税込)/ 紙本:715円 (税込・送料別)
【振子車両の復興計画】 (詳細)
データ本:324円 (税込)/ 紙本:670円 (税込・送料別)
【前面展望車の復興計画】 (詳細)
データ本:324円 (税込)/ 紙本:670円 (税込・送料別)
【関空アクセス鉄道の復興計画】 (詳細)
データ本:324円 (税込)/ 紙本:715円 (税込・送料別)
【鉄道ジャーナリズムの復興計画】 (詳細)
データ本:324円 (税込)/ 紙本:670円 (税込・送料別)
データ本:324円 (税込)/ 紙本:756円 (税込・送料別)
【「復興計画」の時刻表集(完全版)】 (詳細)
データ本:324円 (税込)/ 紙本:864円 (税込・送料別)
【寝台車と食堂車の復興計画(前篇)】 (詳細)
データ本:324円 (税込)/ 紙本:715円 (税込・送料別)
【寝台車と食堂車の復興計画(後篇)】 (詳細)
データ本:324円 (税込)/ 紙本:670円 (税込・送料別)
【鉄道デザインの復興計画】 (詳細) アンチ水戸岡派必読の書
データ本:324円 (税込)/ 紙本:756円 (税込・送料別)
【「関西鉄道」の復興計画(前篇)】 (詳細)
データ本:324円 (税込)/ 紙本:715円 (税込・送料別)
【「関西鉄道」の復興計画(後篇)】 (詳細)
データ本:324円 (税込)/ 紙本:715円 (税込・送料別)
【関西経済の復興計画(鉄道篇)】 (詳細)
データ本:324円 (税込)/ 紙本:715円 (税込・送料別)
【京阪神間直通輸送の復興計画】 (詳細)
データ本:324円 (税込)/ 紙本:756円 (税込・送料別)
【阪和間直通輸送の復興計画】 (詳細)
データ本:324円 (税込)/ 紙本:756円 (税込・送料別)
【関西私鉄王国の復興計画(上巻)】 (詳細)
データ本:324円 (税込)/ 紙本:605円 (税込・送料別)
【関西私鉄王国の復興計画(中巻)】 (詳細)
データ本:324円(税込)/ 紙本:670円(税込・送料別)
【関西私鉄王国の復興計画(下巻)】 (詳細)
データ本:324円(税込)/ 紙本:670円(税込・送料別)
【京阪大津線の復興計画書】
PDF版:税込999円(アフィリエイト率60%)
製本版:税込・送料込1200円 (A4・110ページ)