(追記あり)なぜ停める?中津駅 | 京阪大津線の復興研究所

京阪大津線の復興研究所

大津線とは、京阪の京津線と石山坂本線の総称です。
この大津線の活性化策を考えることが当ブログの目的です。
そのために、京阪線や他社の例も積極的に取り上げます。

読み:なかつ

所在:大阪市北区中津三丁目

開設:1925(大正14)年11月4日

1日乗降人員:11,182人(2015年)

隣駅:梅田(0.9km) ←→(1.5km)十三

 

中津は阪急の駅であり、西から神戸本線・宝塚本線・京都本線が並んだ三複線区間の途中にあります。ただし、京都本線にはホームがなく、全列車が通過します。これは、京都本線の終点が厳密には梅田ではなく十三であり、十三―梅田間は宝塚本線の線増線に乗り入れる形をとっているためです。

 

中津では神戸本線と宝塚本線がそれぞれ島式ホームを1面ずつ備えていますが、その幅はどちらも狭く、身の危険を感じるほどです。また、エスカレーターやエレベーターも設置されていません。

 

安全性とバリアフリーの観点からして、早急に駅構造を改善する必要があります。片方のホームを廃止して線路をずらし、空いたスペースを使ってもう片方のホームを拡幅すべきでしょう。

 

しかし、阪急には神戸本線と宝塚本線に差をつけたくないという意識が根強くあります。例えば、昼間時に梅田から宝塚へ向かう場合、宝塚本線の急行を乗り通すよりも、神戸本線の特急に乗って西宮北口で今津線に乗り換えたほうが(わずか1分ながら)早く着きますが、公式にはこのことは一切案内されていません。

 

こうした意識の起源は、1956(昭和31)年2月2日に起こった「庄内事件」に求められます。これは、朝のラッシュ時に宝塚本線の服部(現・服部天神)で車両が故障し、1.5km梅田寄りの隣駅である庄内まで乗客約1,000人を徒歩で誘導したものの、空車の手配が遅れたため、怒りを爆発させた乗客が線路上に溢れて後続列車を停めた事件です。

 

阪急は警察の協力を得つつ、小林米三専務(当時)を現地に派遣して説得に努め、3時間余りを要してようやく事態を収拾させました(『鉄道ピクトリアル』1998年12月増刊号)。

 

宝塚本線は今でこそ神戸本線と同じ規格の車両に統一されていますが、この事件が起こった当時はまだ小型車が多数を占めており、当初から高速鉄道を志向して建設された神戸本線や京都本線とは大きな格差がありました。輸送力不足や遅延も常態化しており、積み重なった乗客の不満が事件の引き金になったと指摘されています。

 

「庄内事件」は阪急にとって相当なトラウマとなったらしく、これ以降宝塚本線の近代化の勢いが加速しました。ただし、中津の改良は神戸本線も含めて一向に進んでいません。

 

しかし、神戸本線の塚口や武庫之荘は特急通過駅でありながら、宝塚本線の主要駅に匹敵する利用があります。どちらの普通列車に対する速達性の要求が高いかは比べるまでもないでしょう。

 

加えて、十三での京都本線との乗り換えの容易さなどを考えれば、やはり中津では神戸本線のホームを撤去して全列車を通過させ、宝塚本線のホームを残して改良するのが最適です。そろそろ「庄内事件」の呪縛から自らを解き放っても良いはずです。

 

さらに、中津の改良にはもう一つ重要な意味があります。宝塚本線と神戸本線の車両規格が統一されたことは先に述べましたが、その車体の最大幅は2,750mmであり、京都本線の最大幅2,850mmに比べて狭くなっています。京都本線は京阪新京阪線が発祥であるため、もともと規格が異なるのです。

 

阪急は1982(昭和57)年から導入を開始した京都本線7300系の車体幅を2,800mmに縮めて標準車両と位置づけ、将来は宝塚本線と神戸本線もこれに合わせる計画を立てましたが、結局は頓挫しました。ただでさえ狭い中津のホームをさらに削るわけにはいかないというのが、その理由でした(『鉄道ピクトリアル』2010年8月増刊号)。

 

その後、構造規則の規制緩和により、中津のホームを削らずに「標準車両」を通せる可能性が出てきました。京都本線の現役特急車である9300系が7300系と同じ2,800mm幅の車体を採用したのは、このためであると言われています。

 

ところが、これを受けて製造された神宝線の9000系の車体幅は2,750mmのままであり、9300系との統一は図られませんでした。最新型の1000系・1300系でも、この関係は変わらないままです。

 

規格統一が再度断念された理由ははっきりしませんが、中津が絡んでいることは間違いないでしょう。その解決のためにも、ホームの統廃合による拡幅が不可欠です。

 

なお、阪急は南海と違って「普通」と「各停」を混用していますが、これを機会に表示・放送とも、京都本線と神戸本線は「普通」、宝塚本線は「各停」に統一すれば分かりやすくなります。

 

(追記)

宝塚本線の十三ー梅田間は、複々線化が完成する以前に、京阪新京阪線から引き継いだ車体幅2,790mmのデイ100形を走らせた実績があります。つまり、中津のホームもそれに対応した規格になっているわけであり、根本的な問題は神戸本線のホームということになります。

 

 

書籍のご案内

【フリーゲージトレインの復興計画】 (詳細)
データ本:324円 (税込)/ 紙本:670円 (税込・送料別)

 

【北海道新幹線の復興計画】 (詳細)
データ本:270円 (税込)/ 紙本:594円 (税込・送料別)

 

[都会のローカル線の復興計画] (詳細)

データ本:324円 (税込)/ 紙本:756円 (税込・送料別)

 

【不都合な停車駅 36選】 (詳細)
データ本:324円 (税込)/ 紙本:864円 (税込・送料別)

 

【各駅停車がローカル線を滅ぼす】 (詳細)
データ本:324円 (税込)/ 紙本:715円 (税込・送料別)

 

【軌道系都市交通の復興計画(前篇)】 (詳細)
データ本:324円 (税込)/ 紙本:670円 (税込・送料別)

 

【軌道系都市交通の復興計画(後篇)】 (詳細)
データ本:324円 (税込)/ 紙本:670円 (税込・送料別)

 

【高加減速車と多扉車の復興計画】 (詳細)
データ本:324円 (税込)/ 紙本:670円 (税込・送料別)

 

【ダブルデッカーの復興計画】 (詳細)
データ本:324円 (税込)/ 紙本:715円 (税込・送料別)

 

【遠近分離ダイヤの復興計画】 (詳細)
データ本:324円 (税込)/ 紙本:715円 (税込・送料別)

 

【振子車両の復興計画】 (詳細)
データ本:324円 (税込)/ 紙本:670円 (税込・送料別)

 

【前面展望車の復興計画】 (詳細)
データ本:324円 (税込)/ 紙本:670円 (税込・送料別)

 

【関空アクセス鉄道の復興計画】 (詳細)
データ本:324円 (税込)/ 紙本:715円 (税込・送料別)

 

【鉄道ジャーナリズムの復興計画】 (詳細)
データ本:324円 (税込)/ 紙本:670円 (税込・送料別)

 

[転換クロスシートの復興計画] (詳細)

データ本:324円 (税込)/ 紙本:756円 (税込・送料別)

 

【「復興計画」の時刻表集(完全版)】  (詳細)
データ本:324円 (税込)/ 紙本:864円 (税込・送料別)

 

【寝台車と食堂車の復興計画(前篇)】  (詳細)
データ本:324円 (税込)/ 紙本:715円 (税込・送料別)

 

【寝台車と食堂車の復興計画(後篇)】  (詳細)
データ本:324円 (税込)/ 紙本:670円 (税込・送料別)

 

【鉄道デザインの復興計画】  (詳細) アンチ水戸岡派必読の書
データ本:324円 (税込)/ 紙本:756円 (税込・送料別)

 

【「関西鉄道」の復興計画(前篇)】  (詳細)
データ本:324円 (税込)/ 紙本:715円 (税込・送料別)

 

【「関西鉄道」の復興計画(後篇)】  (詳細)
データ本:324円 (税込)/ 紙本:715円 (税込・送料別)

 

【関西経済の復興計画(鉄道篇)】  (詳細)
データ本:324円 (税込)/ 紙本:715円 (税込・送料別)


【京阪神間直通輸送の復興計画】  (詳細)
データ本:324円 (税込)/ 紙本:756円 (税込・送料別)

 

【阪和間直通輸送の復興計画】  (詳細)
データ本:324円 (税込)/ 紙本:756円 (税込・送料別)


【関西私鉄王国の復興計画(上巻)】  (詳細)
データ本:324円 (税込)/ 紙本:605円 (税込・送料別)

【関西私鉄王国の復興計画(中巻)】  (詳細)
データ本:324円(税込)/ 紙本:670円(税込・送料別)

【関西私鉄王国の復興計画(下巻)】  (詳細)
データ本:324円(税込)/ 紙本:670円(税込・送料別)

【京阪大津線の復興計画書】
PDF版:税込999円(アフィリエイト率60%)
製本版:税込・送料込1200円 (A4・110ページ)



鉄道コム