小田急の2019年3月ダイヤ改正の変化を探る

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2018年3月に開始された新ダイヤ。それから1年経過した2019年3月ダイヤ改正。このダイヤ改正で何らかの変化はあったのでしょうか。その変化点について簡単にまとめました。

小田急1000形

写真1. 町田に停車中の1000形

主な変化点のまとめ

・休日日中時間帯の成城学園前発着の準急の廃止
・平日22時台のダイヤパターン変更
・急行の開成停車
・新宿発着各駅停車の一部と最後の通勤急行(新宿着8:50)の10両化

この他に、新宿発着の各駅停車の一部10両化や通勤急行の10両化も行われますが、実はそこまで大きな変化ではありません。主要な変化点をそれぞれ解析したあと、時間帯ごとに変化点をさぐることにしましょう。

休日日中時間帯の成城学園前発着の準急の廃止

新宿発着の急行(あるいは快速急行)や各駅停車と比較して、千代田線直通の準急は空いている傾向にありました。急行通過駅のうち利用の多い駅に停車して、各駅停車の混雑の緩和や世田谷エリア-千代田線の結びつきを強化しようという意図がありました。しかし、現実には空いていました。そのため、準急が削減されました。代々木上原断面で12時台~15時台で成城学園前発着の準急が廃止され、準急の運転間隔を10分から20分になります。

なお、平日はもともと20分間隔ですので、今回のダイヤ改正で大幅な減便はありませんし、休日でも朝ラッシュに近い時間帯(12時以前と16時以降)については準急の10分間隔運転が維持されています。あくまでも利用の少ない時間帯限定の施策です。

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実際に休日日中時間帯の混雑を調査しています。上で書いたように、準急はガラガラであり、準急が全削減されなかったことが不思議なくらいです。

小田急の休日日中時間帯の最混雑区間の混雑状況(下北沢-世田谷代田)

※別ウィンドウで開きます

平日22時台のダイヤパターン変更

平日22時台のダイヤパターン変更も大きな変化点です。ひとことで述べると、急行を経堂に停車するかわりに(経堂以遠の各駅の利用者が新宿から乗らなくなる)各駅停車を削減するというものです。実際に変化を見てみましょう。まずは22時以降の新宿の発車時刻を比較します(表1)。

表1. 深夜の新宿の発車時刻の比較

19.3ダイヤ改正前後小田急新宿時刻

行先の凡例
無印=小田原、秦=秦野、厚=本厚木、海=海老名、大=相模大野、藤=藤沢、和=大和、町=町田、唐=唐木田、遊=向ヶ丘遊園、成=成城学園前、経=経堂

15分サイクルのダイヤから20分サイクルのダイヤに変更されていることがわかります。新宿断面では、以下の傾向が読みとれます。

・急行と快速急行はほとんど本数が維持されている(唯一23:57発の快速急行は急行に変更されています)
・各駅停車は30分に4本から10分間隔に変更されている(30分に1本減便されています)

今度は代々木上原断面で22時以降の千代田線直通の時刻を確認しましょう(表2)。

表2. 代々木上原断面での千代田線-小田急線直通の発車時刻

19.3ダイヤ改正前後小田急代々木上原時刻

急行が準急に置き換わっていることがわかります。これは向ヶ丘遊園以遠の速達列車を削減しようという意図や、利用の多い世田谷区の駅のフォローが挙げられることでしょう。また、0:03発の急行相模大野行きはなくなっています。このため、新宿23:57発の快速急行は急行に変更されているのです。

新宿と代々木上原双方の比較からわかることは、新宿発の速達列車の本数を維持しつつ、各駅停車の本数を減らすために千代田線からの急行を準急に格下げしているということです。急行通過駅のうち、利用の多いのは代々木上原から登戸の間にあります。これらの駅は準急停車駅です。そのため、千代田線からの準急が停車すれば各駅停車が極端に混むことはなく、新宿発の各駅停車の本数を減らすことができるということです。

急行の開成停車

従来の急行は新松田と小田原の間の途中駅には停車しませんでしたが、今回のダイヤ改正から停車します。といっても日中時間帯は急行の運転はありません。どうするのかというと、多くの快速急行が新松田-小田原を急行として運転します。こうすることで、町田以東では快速急行の停車駅で運転しつつ、開成に停車することができるのです。

では、所要時間はどうでしょうか。比較してみましょう。日中時間帯の快速急行の新宿-小田原の所要時間は平日の下りで90分です。ダイヤ改正前は90分でした。ただし、平日の上りは93分(ダイヤ改正前)から94分に増えてしまっています。休日については(ダイヤパターンが乱れるので単純比較は難しいものの)所要時間に変化はありません。つまり、平日の上り以外では、日中時間帯では開成停車による時間的ロスはありません。平日の朝ラッシュピーク後は1分所要時間は伸びています。また、夕方下りは所要時間が伸びる列車があればかえって所要時間を短縮(新宿17:53発や新宿19:09発)するものもあります。そのため、夕方ラッシュ時も実質的な所要時間増加はありません。これはダイヤ改正前に新松田での停車時間が長い電車が多かったことに由来します。

新宿発着各駅停車の一部と最後の通勤急行(新宿着8:50)の10両化

2018年新ダイヤで10両編成の各駅停車が運転開始されましたが、それは全て千代田線直通でした。これは代々木八幡のホームが10両対応になっていなかったためです。そのため、朝ラッシュ時の各駅停車は比較的空いている千代田線直通が10両編成で、混んでいる新宿発着が8両編成というアンバランスさがありました。

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実際に平日朝ラッシュ時間帯の混雑を調査しています。上で書いたように、千代田線直通各駅停車は比較的余裕があり、10両編成の輸送力がじゅうぶんに生かされていませんでした。

小田急の混雑状況(複々線化後新ダイヤ、朝ラッシュ時現場調査)
※別ウィンドウで開きます

これがほんの一部といえ、10両編成になります。ただし、朝のラッシュ時の各駅停車が全て10両編成になるわけではありません。私が代々木上原で調査した際は新宿発着の各駅停車の混雑率は125%でした(上記リンク参照)ので、無理やり10両編成にする必要もありません。どちらかというと、速達列車と各駅停車の折り返しを柔軟にする、という意味合いのほうが強いです。そう、新宿発着の各駅停車10両化でダイヤの設定や運用の制約が1つ除去されたと理解するべきでしょう。

運用の柔軟性が上がった1つのエピソードとして、通勤急行の10両化が挙げられます。ダイヤ改正前は新宿着8:50の通勤急行は8両編成でした。これは、折り返しが各駅停車だったため、10両編成で運転できなかったためです。ダイヤ改正で各駅停車の10両の運行が可能になり、晴れて当該の通勤急行も10両編成になりました。これが各駅停車10両化の一番の成果かもしれません。

2019年ダイヤ改正のまとめ

各駅停車10両化がメインの2019年3月ダイヤ改正。また、これと同時に試行的要素の強い準急についても見直しがなされました。それでも、おおむね2018年新ダイヤが受け継がれました。これは2018年新ダイヤの完成度が良かったという評価ができます。完全なダイヤが完成することはありません。運行する人、利用する人が変われど、車両やシステムが変わろうと、安全を根幹として多くの人を快適に早く目的地まで運ぶという使命が変わることはありません。首都圏の民鉄でも有数の設備を活かして、さらに進化してもらいたいものです。

小田急のダイヤの紹介ページ

ここまで特定の時点での変化という細かな点に着目してきました。では、小田急のダイヤはどのようなものでしょうか。そのダイヤパターンについてまとめました。

小田急小田原線(ダイヤパターン紹介)

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