中濃(ちゅうのう)ってってもソースのことじゃない。美濃のくにの中央部をさす地域名だ。西濃(せいのう)とか東濃(とうのう)ってのはようみみにする。大垣市を中心とした地域が西濃で、中央線ぞいに多治見市から中津川市までの5市がならぶのが東濃ってわけだけど、中濃ってのはいまいちつかみにくい。ところで2019年2月じゅうよっかの中日新聞に「みどころ満載!岐阜近郊・中濃の観光と産業」って題で、つぎのとおり中濃の地図がのっとった。この地図をみながら中濃に属する市町村について、岐阜市からのびる鉄道路線との位置関係でみてみる。
まんなか はもちろん、美濃のくにと飛騨のくにをあわせた岐阜県の県都である岐阜市(ぎふし)だ。名鉄名古屋本線最北端に位置する名鉄岐阜駅があって、東海道線の中間駅であり高山線が分岐する岐阜駅がある。
みなみ は名鉄名古屋本線ぞいに岐南町(ぎなんちょう)と笠松町(かさまつちょう)があって、さらに笠松駅から分岐する竹鼻線(たけはなせん)・羽島線をとおって羽島市(はしまし)にいたって、終点の新羽島駅で東海道新幹線の岐阜羽島駅と連絡する。
にし は東海道線ぞいに瑞穂市(みずほし)がある。えきのなまえは穂積駅(ほづみえき)なのに、市のなまえはさかさまになる。ほれと、岐阜市内どまりではあるけど、岐阜市中心部から旧名鉄鏡島線(かがしません)がにしにのびとった。
西北方向 には旧名鉄揖斐線がのびとって、北方町(きたがたまち)にいけた。いまは大垣市が起点の樽見鉄道(たるみてつどう)が中濃の区域のにしのふちを南北にはしっとって、瑞穂市の一部をかすめて、北方町からほんのちょこっとにしにはずれたとこをとおって、本巣市(もとすし)にいける。市役所のもよりの本巣駅をとおって、おんなじ本巣市内になる終点の樽見駅までいっとるだけど、福井県大野市の越美北線(えつみほくせん)越前大野駅まで延伸したいとこだ。
きた は旧名鉄高富線(たかとみせん)が山県市(やまがたし)のいりぐちまでのびとった。正確にいうと山県市の直前までではある。
東北方向 には長良川(ながらがわ)ぞいにはしっとった旧名鉄美濃町線(みのまちせん)ぞいに関市(せきし)から美濃市(みのし)までいけた。いまは、いったんひがしに高山線の美濃太田駅(みのおおたえき)までいって、ほっから長良川鉄道にのりかえて、まずは西北方向にもどるかたちでとちゅう富加町(とみかちょう)をとおって関市にいって、ほっからきたに美濃市までいって、さらに郡上市(ぐじょうし)までいける。関市ははもののまち、美濃市は和紙のまち、郡上市はおどりのまちだ。長良川鉄道は郡上市内、市役所もよりの郡上八幡駅(ぐじょうはちまんえき)から終点の北濃駅(ほくのうえき)までいっとるだけど、福井県大野市の越美北線(えつみほくせん)九頭竜湖駅(くずりゅうこえき)まで延伸したいとこだ。さらには高山線高山駅まで、あるいは富山県砺波市(となみし)の城端線(じょうはなせん)城端駅まで延伸したい。
ひがし はまず、平行する名鉄各務原線(かかみがはらせん)と高山線にそって各務原市(かかみがはらし)がある。ながったらしくて、「かがみはらし」ってつめていうこともある。名鉄各務原線は各務原市内のひがしはしの新鵜沼駅(しんうぬまえき)からみなみ愛知県にはいっていっちゃうだけど、高山線はさらに鵜沼駅(うぬまえき)から東東北方向にのびて、坂祝町(さかほぎちょう)、美濃太田駅を代表駅とする美濃加茂市(みのかもし)、川辺町(かわべちょう)、七宗町(ひちそうちょう)、白川町(しらかわちょう)ってとおっていって、ほのさき飛騨のくににはいって高山駅をとおって、さらに富山県富山の北陸新幹線富山駅までいく。以上のほかに、高山線を川辺町からひがしにはずれて八百津町(やおつちょう)と、おなじく高山線を白川町からひがしにおおきくはずれて東白川村(ひがししらかわむら)があるだけど、八百津町のほうは、名古屋を起点とする名鉄犬山線から名鉄広見線(ひろみせん)、名鉄八百津線(やおつせん)ってつながって終点の八百津駅まで、高山線とはちがう経路で鉄道がとおっとった。
ちなみに、「合掌づくりの白川郷」が白川町や東白川村にあるのかってかんちがいしそうだけど、ほじゃなくて飛騨のくには富山県と県ざかいを接する白川村(しらかわむら)にある。まぎらわしいことだ。
※ 可児市と御嵩町
以上、20の自治体についてみてきただけど、じつは可児市(かにし)と御嵩町(みたけちょう)も行政区分として中濃の地域にふくまれる。中日新聞の判断でこの地図にはいってないだけど、このふたつの自治体についてもみとく。名古屋を起点とする名鉄犬山線からつながる名鉄広見線(ひろみせん)にそって、可児市と御嵩町はある。名鉄広見線が反転分岐するとこが新可児駅で、終点が御嵩駅になる。また、可児市は美濃加茂市の美濃太田駅から東南方向に分岐して東濃の多治見駅につながる太多線(たいたせん)もとおっとって、名鉄新可児駅のとなりに太多線の可児駅がある。
(さんこう)
- 岐阜につながる鉄道のうつりかわり
- 岐阜といっただけではわからない「3つの岐阜」そして中濃と東濃のさかいはどこ?|TOPPYのくびったけ日記|2016/03/01・2018/08/18
- 東濃の地図(中日新聞)
- 可児と御嵩はどっちなんだろう
中日新聞には「中部新時代」という地域ごとの広告企画がありまして、県単位ではなく「尾張東部」や「東三河」といった具合に地域単位で紙面が組まれ、全域にて掲載されます。その、地域の区割りが「中日流」なんですよね。そもそも中部新時代に「滋賀県」が入っていること自体も中日流なのですが。この日、入っていたのは「東濃」地域版。東濃地域とは、その名のとおり岐阜県南部にある「美濃」の東側です。中日新聞の東濃MAPには中津川市、恵那市、瑞浪市、土岐市、多治見市と…ここまではいいのですが、それに加えて可児市と御嵩町が含まれているのです。可児市と御嵩町は、行政や気象の区分では実は東濃ではないのです。 - 御嵩町は特にまぎらわしい
岐阜県による行政の区分けでは、「東濃」は中津川、恵那、瑞浪、土岐、多治見の5市。可児市と御嵩町は「中濃」なのです。行政の区分は、普段の生活でそれほど気にする必要はありませんが、問題は気象の区分です。気象台が発表する警報・注意報の区分でも、可児市と御嵩町は「中濃」です。なので、災害発生のおそれのある場合の特別警報や警報が、中濃に出された場合は、可児市と御嵩町では警戒する必要があるのですが、どうしてもこの2市町には「東濃」というイメージが付きまといます。そのひとつが、この中日新聞による扱いです。中日新聞は配送の関係からか、可児市と御嵩町を東濃扱いにしているため、2市町の中日読者は東濃だと思い込んでいるパターンをよく見かけます。一方の岐阜新聞は、美濃加茂市の美濃加茂総局内に可児支局があり、可児・御嵩エリアは中濃の美濃加茂と一体化されています。さらに、御嵩町内には東濃高校、東濃実業高校があることも、東濃のイメージを強くしています。両校は岐阜県立の高校であり、なぜ、行政の区分けでは中濃である御嵩町に東濃と名の付く高校があるのか、と思ってしまいますが…。現在は「西濃」「岐阜」「中濃」「東濃」と行政によって4つに分けられている美濃ですが、「東濃」「西濃」のみで分けられていたり、「東濃」「西濃」「北濃」で分けたりと、様々な分け方が存在し、「中濃」という区分を用いない場合には、可児市と御嵩町は「東濃」に分けられることもあり、その名残のようです。とはいえ、現在の行政区分はもちろん、特別警報や警報では、可児市と御嵩町は「中濃」なので、災害発生のおそれがある際などそこは、しっかりと中濃であると押さえておく必要があります。 - その「岐阜」は、どの「岐阜」?
愛知・三重・岐阜の東海3県で、県名と県庁所在地の名が唯一同じなのが「岐阜」です。「愛知」と「名古屋」、「三重」と「津」は、それぞれ呼び名が違うために、「県のことを話しているのか」と「県庁所在地のことを話しているのか」を混同することはありません。しかし「岐阜」の場合、「この前、岐阜でさあ」ですとか「岐阜ではね」といった会話のときに、その「岐阜」が「岐阜県」のことなのか「岐阜市」のことなのかが曖昧で、思わず「それは県のことですか?市のことですか?」と聞きたくなってしまうのですが…。岐阜の人の言う「岐阜」は、実は、それだけではなかったのです。 - 地域としての「岐阜」
先日、仕事で各務原にまつわる文章を書いていたときに、各務原市に「岐阜保健所」があることを知りました。「岐阜の保健所は各務原市にあるのか」と思っていたら、なんと、岐阜市には別途「岐阜市保健所」があるではありませんか。岐阜市の「岐阜市保健所」と各務原市の「岐阜保健所」。これはどういうこと?と思ってSNSで聞いてみましたら、なんと、「岐阜県」でも「岐阜市」でもない、「第3の岐阜」があったのです。それは、地域名としての「岐阜」。美濃は「東濃」「中濃」「岐阜」「西濃」の4つにわけられ、その地域としての「岐阜」には、岐阜市、各務原市、羽島市、瑞穂市、本巣市、山県市、笠松町、岐南町、北方町の6市3町が含まれるというのです。岐阜保健所は、この岐阜地域から岐阜市を除いた地域が管轄エリアとなっています。気象の特別警報・警報にも「岐阜・西濃」という区分が存在します。この場合の「岐阜」とは、岐阜県でも岐阜市でもなく、地域名としての「岐阜」であり、先述の6市3町を示しています。岐阜県民の言う「岐阜」には、「岐阜(県)」、「岐阜(市)」、「岐阜(地域)」の3パターンがあり、それぞれ「県」「県庁所在地」「6市3町」という意味があるわけです。「岐阜ではさあ」という言葉を聞くたびに、「それは、どの岐阜のこと?」と、頭を抱えてしまう愛知県民なのでありました。きっと岐阜県人どうしは、空気で即座に把握できるのでしょうね。
- 東濃の地図(中日新聞)
- 岐阜県の行政区域図(マピオン)
- 岐阜県 - Wikipedia〔42自治体〕 > 地域区分