ローカル駅の取扱基準 | 京阪大津線の復興研究所

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大津線とは、京阪の京津線と石山坂本線の総称です。
この大津線の活性化策を考えることが当ブログの目的です。
そのために、京阪線や他社の例も積極的に取り上げます。

ローカル線の競争力向上には優等列車の設定ないし駅の統廃合が不可欠ですが、どの駅に停める(どの駅を残す)かの基準は何でしょうか。これについての見解を以下に示します。

 

1)乗降人員の多い駅を残す

これは最も基本的な考え方ですが、他の条件と対立する場合には、いずれを優先するか慎重に判断する必要があります。

 

2)交換設備のある駅を残す

単線区間における交換可能駅はダイヤ作成上重要なので残すのが原則ですが、前回述べた富山地方鉄道の舌山のようなケースでは信号場への降格もあり得ます。現在活用していない交換設備も将来は必要になる可能性があるので、安易に撤去すべきではありません。

 

3)駅前の開発効果が高い駅を残す(新設する)

幹線道路に近く、駅前に送迎スペースや駐輪場など、道路交通と連携するための設備を整えやすい駅を優先します。手狭な駅が隣接する場合はそちらを統廃合の対象とします。

 

4)駅間距離に配慮して残す

利用客の徒歩圏が半径約1kmであるという経験則に基づき、駅勢圏同士が重ならないよう、平均駅間距離を約2kmにすることを意識します。

 

5)各自治体に最低1つの駅を残す

自治体から支援を受け、地元住民の郷土愛を得るために必要です。

 

三岐鉄道北勢線の場合は、比較的乗降人員の多い六把野と、交換可能駅の北大社を廃止し、中間に東員を新設しました。これは1)2)の条件に反しますが、東員は新設駅ながら交換設備を持っているので、ダイヤ作成上の問題は生じていません。さらに、3)に配慮して駅前広場が整備されたため、旧市街地に位置していた六把野よりも広範囲から集客できるようになっています。

 

坂井橋を移設した星川、大泉東と長宮を統合した大泉も3)を重視して集客力を高めています。これらによって平均駅間距離は1.2kmから1.7kmに広がり、4)の条件に近づいています。

 

この結果、現在の北勢線は桑名市に7駅、東員町に2駅、いなべ市に4駅を擁しています。前々回に提案したダイヤ改正案で午前中の下りと午後の上り列車を穴太通過とした場合、その方向では東員町内の停車駅が1つだけになりますが、5)の条件は満たします。

 

これに対して、近年の各駅の乗降人員が公表されていないため前回は例に挙げませんでしたが、拙著【軌道系都市交通の復興計画(前篇)】 で取り上げた福井鉄道も、平成に入ってから5つの駅を新設しました。さらに、かつては昼間時に1時間あたり急行1本・各駅停車2本を運転していましたが、1998(平成10)年11月のダイヤ改正で各駅停車のみを20分毎に運転するようになりました。

 

福井鉄道300形の急行

 

各駅で昼間時に20分に1本の乗車機会を提供したのは、ローカル線としては破格のサービスです。しかし、路線単位では増客・増収効果は見られず、減少傾向に歯止めがかからなかったため、2016(平成28)年3月の改正で1時間あたり急行2本・各駅停車2本に変更されました。この経緯は神鉄粟生線に酷似しており、郊外においてきめ細かく利用客を拾い集める施策が時代遅れであることを証明しています。

 

復活した急行は以前より停車駅が増えましたが、平成以降の新設駅の中で停まるのは、ショッピングセンターに隣接したベル前だけです。このことは、他の新設駅が重要な存在ではないことを示しており、駅の取扱基準を誤った結果ここに至ったと言わざるを得ません。なお、福井鉄道のダイヤ改正案は「軌道系都市交通の復興計画(前篇)」で示したので、ここでは繰り返さないものとします。

 

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