なぜ停めない?西院駅 | 京阪大津線の復興研究所

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大津線とは、京阪の京津線と石山坂本線の総称です。
この大津線の活性化策を考えることが当ブログの目的です。
そのために、京阪線や他社の例も積極的に取り上げます。

読み:さいいん

所在:京都市右京区西院高山寺町

開設:1928(昭和3)年11月1日

1日乗降人員:43,953人(2015年)

隣駅:大宮(1.4km) ←→(1.8km)西京極

 

西院は阪急京都本線の駅です。もともとは京阪の子会社である新京阪鉄道の手で地上駅として開業しましたが、京阪に合併された後の1931(昭和6)年に京阪京都(現・大宮)まで延伸された際に、関西最初の地下駅となりました。その後、戦時中に阪急と京阪が合併し、戦後に分離する際に新京阪線は阪急側に残り、同社の京都本線となって現在に至ります。

 

西院の駅の西寄りは西大路四条の交差点であり、京都市営バスが多数発着します。また、東寄りで交差する京福電気鉄道嵐山本線が西院(こちらの読みは「さい」)駅を設けており、乗り換えが可能です。

 

もともと阪急の西院は西端にしか改札口がなく、京福の西院までは200mほど歩かなければならず不便でした。これを改善するため、阪急の駅の東端から京福の駅まで地下通路が整備されました。その正確な時期は不明ですが、阪急の駅ホームが7両分から10両分に延伸された1980年代前半には完成していたと言われています。

 

阪急と京福の乗り換えは隣駅の大宮(京福は四条大宮)でも可能ですが、大阪側から見れば西院乗り換えのほうがルートの重複がないため有利であり、乗車時間の合計は大宮経由の場合より5分程度短縮できます。

 

ところが、西院の東側改札口は地元商店街の反対により使用中止となってしまいました。加えて、当時の特急と通勤特急が西院通過・大宮停車だったため、大阪側からも大宮を経由するケースが少なくありませんでした。これはバス連絡に関しても同じです。

 

その後、2001(平成13)年のダイヤ改正で大宮が特急停車駅から外され、続いて2007(平成19)年に西院が通勤特急の停車駅に加えられたことで、両駅は完全に同格となりました。しかし、西院での京福との乗り換えは相変わらず不便なままでした。

 

それが解消されたのは、「阪急・京福西院駅総合改善事業」が完成した2017(平成29)年3月25日のことです。これにより、阪急西院の河原町行きホームと京福西院の嵐山行きホーム、京福西院の四条大宮行きホームと阪急西院の梅田行きホームが直結され、利便性が大きく向上しました。当初の構想から実に40年近い時間を要したのです。

 

大阪や神戸ではものを言う阪急の政治力も、京都ではなかなか通じにくいようで、他にも煮え湯を飲まされた経験があります。

 

1963(昭和38)年に大宮から河原町までの地下線延伸に合わせ、烏丸―河原町間に地下街を整備しようとした際には、四条繁栄会商店街振興組合に反対され、結局はショーウィンドウが点在するだけの殺風景な地下道を設けるに留まりました。

 

2013(平成25)年に河原町の駅名を「京都河原町」へ改称しようとした時は、四条繁栄会が「四条河原町」を推して譲らなかったため、改称自体を断念しました。ちなみに、神戸本線の三宮は、この時に「神戸三宮」に改称されています。

 

駅名改称の件については「四条河原町」のほうが地名として正しいので四条繁栄会に理がありますが、地下街の整備中止は地域の発展を阻害するものであり、好ましくありません。

 

拙著【軌道系都市交通の復興計画(後篇)】 で指摘したように、四条繁栄会は京都市に働きかけて四条通の四条烏丸―四条京阪前間の車道を片側2車線から1車線に減らし、歩道を2倍に拡張させました。

 

しかし、そもそも歩道の混雑が絶えなかったのは、魅力のない地下道を設けたことで地上に歩行者が偏ったのが一因です。このため、自ら原因を作っておきながら歩道拡張を要望したのは身勝手であるとの批判も根強くあります。

 

四条繁栄会の組合地区は四条烏丸以東から四条大橋以西の間なので、西院の「地元商店街」とは無関係です。逆に言えば、それほど有力ではないはずの商店街が、大企業である阪急の計画を何十年も先送りさせたのですから、京都という都市は底が知れません。

 

ともあれ、ようやく呪縛が解けて京福との接続が改善されたのですから、今後は積極策に転じるべきです。前回の記事で、阪急京都本線の特急停車駅から淡路と茨木市を外す代わりに南茨木に停めることを提案しましたが、これに西院を加えても良いのではないでしょうか。

 

淡路・茨木市を通過して南茨木・西院に停めたのでは、結局のところ特急停車駅の数は現在と同じになってしまいます。しかし、南茨木と同様に、西院も阪急の競争力を高める上で重要な駅です。1日あたりの乗降人員も、長期的には微減傾向にあるものの、ほぼ20年に渡って4万人前後の水準を維持しています。

 

対照的に、隣駅の大宮の乗降人員は最盛期には5万人を超えていましたが、2015(平成27)年には31,523人に減少しています。2001(平成13)年3月のダイヤ改正で特急停車駅から外された時点ではまだ4万人台を維持していたので、その当時と比べても減っています。今や西院とは完全に立場が逆転しています。

 

大宮を特急停車駅から外したこと自体は正しい決断だったと思われますが、現状ではそれを補うだけの対策を打ち出せていません。京都側のターミナルが実質的に一つ減ったことで、京阪間直通輸送における阪急の競争力が低下したのは、大宮と西院の乗降人員の合計値が減っていることからしても明らかです。

 

やはり、河原町・烏丸に次ぐ第三のターミナルとして西院を育てる必要があり、快速特急・特急・通勤特急を大宮通過・西院停車に統一すべきです。京福だけでなくバスとの接続においても、右京区近辺からは西院経由が大阪方面への最短ルートとなるケースが多く、JR山陰本線(嵯峨野線)への対抗上も全列車を停める価値は十分にあります。

 

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