新設ローカル駅の実態 | 京阪大津線の復興研究所

京阪大津線の復興研究所

大津線とは、京阪の京津線と石山坂本線の総称です。
この大津線の活性化策を考えることが当ブログの目的です。
そのために、京阪線や他社の例も積極的に取り上げます。

平成以降に各地のローカル私鉄で新たに設置された駅と、隣接駅の乗降人員の例を以下に示します(全てを網羅したわけではありません)。太字で記しているのが新駅です。

 

関東鉄道(2014年の数値)

新取手2,142人―0.8km―ゆめみ野1,175―1.2km―稲戸井1,610人

 

上信電鉄(2015年)

南高崎100人―1.3km―佐野のわたし138―1.5km―根小屋372人―1.3km―高崎商科大学前446―1.1km―山名250人

上州福島―2.7km―東富岡508―0.9km―上州富岡1,112人

 

富士急行(2013・14年)

都留市522人―0.8km―谷村町499人―1.2km―都留文科大学前1,515―0.9km―十日市場123人

 

豊橋鉄道渥美線(2014年)

豊島470人―1.5km―神戸206―0.9km―三河田原3,002人

 

富山地方鉄道(2015年)

上堀292人―0.6km―小杉422―0.5km―布市240人

稲荷町1,141人―0.9km―新庄田中136―1.1km―東新庄896人

長屋31人―1.1km―新黒部415―0.3km―舌山74人

 

近江鉄道(2011・12年)

米原―2.3km―フジテック前708―1.1km―鳥居本280人

高宮268人―0.8km―スクリーン642―1.7km―多賀大社前

五箇荘132人―2.1km―河辺の森26―2.3km―八日市4,162人―2.2km―長谷野44人―0.9km―大学前186―1.5km―京セラ前72―1.3km―桜川312人

日野986人―4.9km―水口松尾110―1.1km―水口832人―0.6km―水口石橋208人―0.7km―水口城南1,058―2.6km―貴生川2,028人

 

和歌山電鐵(2015年)

竈山564人―1.1km―交通センター前259―0.6km―岡崎前1,065人

 

一畑電車(2009年)

布崎171人―0.7km―湖遊館新駅29―0.7km―園77人

高ノ宮42人―1.3km―松江フォーゲルパーク45―1.2km―秋鹿町229人

 

高松琴平電気鉄道(2014年)

平木424人―0.6km―学園通り1,141―1.3km―白山252人

仏生山2,964人―1.0km―空港通り1,137―1.0km―一宮1,573人

 

島原鉄道(2012年)

本諫早1,132人―1.4km―397―1.9km―小野本町145人―0.7km―干拓の里132―2.0km―森山137人

 

 

全体を見て明らかなのは、新駅が隣接駅の乗降人員を超えることは多くないという点です。数少ない例としてまず目につくのは富士急行の都留文科大学前ですが、当駅は大学の開校と商業施設の充実によって市の中心部が事実上こちらに移ったため設けられたものです。

 

富士急行もこれに伴って特急停車駅を都留市駅から都留文科大学前に変更しています。こうした明確な意図があってこそ利用客が定着するのです。

 

同様に、富山地方鉄道の新黒部も、北陸新幹線の黒部宇奈月温泉駅との接続駅として開設され、当初から特急停車駅であることが好結果につながっています。逆に不可解なのは新庄田中で、両隣の駅から約1kmしか離れておらず、乗降人員も大差をつけられています。

 

しかも、ほとんどの新駅は地元が事業費の大部分または全部を負担する請願駅として開設されますが、新庄田中は「総事業費約4,200万円のうち750万円を富山市が補助」したと北國新聞で報道されています。ということは、残りの3,450万円は富山地方鉄道が自己負担したのでしょうか。だとすれば経営上の大きな失策です。

 

新駅の利用客が隣接駅に比べて伸び悩むケースが多いのは、収益よりも駅周辺の地元客の要望が優先されることが一因です。これは本来、請願駅に特有の課題ですが、鉄道会社が増収に役立たない駅を自費で作っているようでは話になりません。

 

新駅の利用客が隣接駅を上回っている例は近江鉄道や高松琴平電気鉄道などにも見られますが、そのような場合は統廃合を行って新駅への集客力を高めるべきです。

 

ただ、今回例に挙げた新駅は、関東鉄道のゆめみ野を除く全てが単線区間に設置されていますが、交換設備のある駅は信号場から昇格した豊橋鉄道の神戸(かんべ)だけです。このため、隣接駅が交換可能駅である場合は廃止しにくくなるという事情があります。

 

富山地方鉄道でも、新黒部から0.3kmしか離れておらず乗降人員が100人にも満たない舌山は本来廃止すべきですが、交換可能駅であるため存続しています。しかし、ここまで駅間距離が短いケースでは、客扱いを行わない信号場に降格するのが妥当でしょう。豊橋鉄道の神戸も、駅に昇格させる必要があったのかは疑問です。

 

こうして見ると、三岐鉄道北勢線の新駅である星川・東員・大泉がいずれも成果を上げているのは、全国的に見ても稀有な例であることが分かります。それが可能なのは、単なる新設ではなく、「移設」や「統合」を伴っているからです。加えて、駅前の整備で道路交通との連携を図っているので、利用客が分散せず集客力が高まっています。

 

他社のローカル線の新駅の多くは、こうした視点が欠けているため利用客が伸びないのです。三岐鉄道は、三岐線でも1997(平成9)年に大長を0.1km富田側に移設し、北勢中央公園口に改称して駅前を整備しており、意識の高さが伺えます。

 

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