全国全線運賃最安値も引き上げへ! 長崎電気軌道運賃改定(2019年4月1日)

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長崎電気軌道は2019年2月26日、プレスリリースにて4月1日に運賃改定を行うと公表した( 平成31年4月1日運賃改定実施のお知らせ )。今回はこれについて見ていく。

全線運賃最安値の路面電車で値上げへ

今回の2019年4月1日長崎電気軌道運賃改定では、ほぼ全面的に運賃を値上げする。

長崎電気軌道は全線で均一運賃を採用している。今回の運賃改定で普通運賃は120円から130円に引き上げられ、10円値上げされる。

そのほか定期運賃を見ても8.23%~8.61%の値上げとなりそうだ。なお、通勤定期の割引率は32.9%、通学定期券(高校以上)の割引率は42.9%となっている。

なお今回の運賃改定では、一日乗車券は500円に据え置かれることとなった。このことから、一日乗車券は5乗車から4乗車で元が取れるようになる。

今回の運賃改定で一番値上がりしているのは貸切運賃で、20.3%も値上げしている。通常利用しないものであるから、これを値上げしたからと言って市民生活に影響が出る可能性は極めて低いので、大幅値上げに踏み切ったのだろう。

とはいえ、路面電車の全線運賃安値の次点は岡山電気軌道の140円であることから、今回の運賃値上げでも長崎電気軌道の全国運賃最安値は変わらない見通しだ。




周辺環境はいかに

では長崎電気軌道の走る長崎市内ではどのような運賃値上げが近年実施されているのだろう。

全国で一番安い運賃賃率であった長崎バスは2015年10月1日についに値上げに踏み切り、基本賃率を1km当たり21円50銭から24円50銭に引き上げた。これにより民間バスの全国最安運賃を基本賃率23円20銭の岡山県の宇野バスに明け渡した(宇野バスは普通運賃が安い分通勤定期券割引率が30%と低いのだが、長崎バスは25%しかないので、通勤定期券だけ見れば僅差であった)。

また2018年12月1日には基本賃率を24円50銭から27円00銭にさらに値上げしたほか、長崎電気軌道と競合する長崎市内中心部特殊区間でも、初乗り150円から160円に値上げしその他の区間でも軒並み10円値上げした。このことから長崎電気軌道も10円値上げしようということにしたのではないだろうか。

そもそも長崎バスが全国で一番安い運賃賃率設定だったのはなぜだろうか。答えは単純明快。長崎電気軌道の運賃が安すぎて、安くしないと対抗できないためである。




そもそも路面電車の運賃はどれくらいが妥当なのか。長崎電気軌道は全線運賃全国最安値であるが、150円以内で全線利用できるのは岡山電気軌道(140円)と東急世田谷線(IC144円)くらいしかない。路面電車利用者数1位は広島、2位は僅差で長崎であるが、1位の広島でさえも2017年8月1日に160円から180円に値上げしている。

長崎バスの現在の運賃が初乗り160円であることを考えると、長崎電気軌道が150円に値上がりしたって使ってくれるはずだ。

安値で何が悪いという人もいるかもしれないが、安値だからこそ経済が停滞すると言っても過言ではない。今回のケースでも、長崎電気軌道の運賃が安すぎるために長崎バスや長崎県営バスが安い運賃を強いられ、末端路線の廃止や長崎電気軌道と競合しない区間での大幅な値上げなどを実施している。

また福岡県を除く九州各県は例年全国の最低賃金ワーストかそれより1時間当たり1円上であり、長崎県の2018年10月より施行される最低賃金は762円しかない(ちなみにワーストは1円単位の争いでまるであみだくじのように決まるのだが、2018年10月施行の最低賃金でのワーストは761円の鹿児島県単独である)。そのためファミレスのバイトなんて時給800円もあればいい方である。東京や大阪では絶対に考えられない破格の安値だ。

そして今の長崎県の現状は、

企業がもらうお金が少ない→企業が使えるお金が少ない→投資されない→工事が少ない→雇用が少ない・給与が少ない→長崎県を離れる→県内で使われるお金が減る→企業がもらうお金が減る→…

という負のスパイラルが起きているのだ。

おかげさまで2015年の国勢調査では、長崎市の人口減少数は全国第2位の14,258人減少となっている(ちなみに3位は宮城県石巻市だが、震災の影響が非常に強いので2020年の調査ではトップ10には入らないはずだ)。

つまり、長崎電気軌道の安値は長崎を滅ぼしかねない。もし長崎電気軌道が全県で物事を考えるのであれば、一刻も早く普通運賃を150円に値上げし、定期券もそれに準じて値上げすべきではないだろうか。

なお、長崎電気軌道では2014年4月1日の消費税引き上げ時(5%→8%)には書面上の認可運賃は120円から124円に引き上げたものの、実施運賃は120円のまま据え置き値上げをしなかった。もし2019年10月1日に消費税が引き上げられたとしても、運賃値上げを行ったばかりであるから、130円のまま据え置いてしまうのであろう。


結び

今回の2019年4月1日長崎電気軌道運賃改定では、運賃がほぼ全面的に値上げされる一方で全国全線運賃最安値は維持されることとなった。

ただ現状の運賃でも路面電車の運賃としては安すぎであり、この安値ゆえに長崎の経済が停滞し長崎を滅ぶと言っても過言ではない。

今後も長崎電気軌道で安すぎる運賃の値上げはあるのか、見守ってゆきたい。

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