東急東横線の混雑状況(平日朝ラッシュ時、祐天寺→中目黒、2024年調査結果)

記事上部注釈
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東京と横浜を結び人気の高い東急東横線。以前は渋谷と横浜を結ぶだけの路線でしたが、現在は新宿地区や新横浜、ひいては相鉄にも直結します。その東横線の混雑はどの程度なのでしょうか。朝ラッシュ時に一番混む区間の混雑状況を実際に現場で調べました。

写真1. 通勤特急としては最混雑列車だった通勤特急森林公園行き

東急東横線朝ラッシュ時の混雑状況まとめ

東急東横線の混雑状況の概要は以下の通りです。

  • 通勤特急と急行が混雑し、各駅停車はそこまで混んでいない
  • 中目黒断面で最混雑時間帯の60分間は7:51~8:50であり、その混雑率は123%である
  • その60分の間でも8:11~8:30、とりわけ8:21~8:30の混雑が特に激しい

詳細を以下に記します。

混雑調査の概要

今回の混雑調査の方法を紹介しましょう。この記事では、定点観測を行い、一定時間の全列車を対象にして各車両の混雑を目視で確認しています。これはプロも行っている調査方法です。

簡単に調査方法を紹介しましょう。一部の個人サイトでは混雑状況を書いているところもありますが、調査方法や混雑指標の言及がないのでう~んと考えてしまうところがあります。そのようなことを踏まえて、弊サイトではきちんと方法を示します(さすがー)。

弊サイトでは混雑ポイントという概念を導入しております。その概要を示します(表1)。

表1. 混雑ポイントの概要

乗車ポイントの概要

せっかくなので、120ポイント~160ポイントの様子をご覧いただきましょう(写真2-4)。いずれも個人情報を守ることを目的に、画質を落としています。

混雑ポイント120ポイント相当

写真2. 混雑ポイント120ポイントの様子(右上に私の指が写っていますね…)

混雑ポイント140ポイント相当

写真3. 混雑ポイント140ポイントの様子(右上に私の指が写っていますね…)

混雑ポイント160ポイント相当

写真4. 混雑ポイント160ポイントの様子(写真3と異なり、ドア部分が圧迫されていることがわかります)

今回は、日比谷線との乗りかえ駅で最も混雑する祐天寺→中目黒で観察しました。

東急東横線の混雑状況の生データ

写真5. 相鉄車はインパクトのある色合い

まず、生データを示します(表2)。

表2. 東急東横線の混雑状況(祐天寺→中目黒、生データ)

次に、各列車の混雑状況を視覚化しました(表3)。

表3. 東急東横線の混雑状況(祐天寺→中目黒、各列車の混雑状況視覚化)

通勤特急、急行が混んでおり各駅停車が空いていることがわかります。

東急東横線の朝ラッシュ時の混雑状況の分析

写真6. 古豪の東武車から降りる乗客群

生データだけでは不親切でしょうから、データを詳細に分析します(やさしー)。

最混雑60分間の推定

一般に朝ラッシュ時の混雑は最混雑60分間で語られます。そこで、最混雑60分間がどこか分析します(表4、図1)。

表4. 東急東横線の混雑状況(祐天寺→中目黒、時間帯別混雑率、各列車の混雑率を算術平均)

図1. 東急東横線の混雑状況(祐天寺→中目黒、時間帯別混雑率、各列車の混雑率を算術平均)

10分間隔で混雑率を各列車の混雑率を算術平均したものです。下の4行は候補となる時間帯の60分間の平均値を算出したものです。わずかな差はありますが、この結果から、最混雑60分間は7:51~8:50と推定しました。

この混雑率は10両編成の速達列車も8両編成の各駅停車もそのまま平均しています。しかし、実際には10両編成と8両編成の混雑率はそのまま平均するのは好ましくありません(この時間帯はいずれにせよ本数比は1:1ですので、上下関係を考察するには問題ないでしょうが)。その意味で再計算すると、混雑率は123%です。

復習:朝ラッシュ時の東横線ダイヤ

写真7. 各駅停車小手指行きは珍しい存在(1日3本)

混雑を分析するうえで、ダイヤに対する理解は欠かせません。そこで、東横線のダイヤを簡単にまとめます。

朝ラッシュ時の東横線は15分サイクルのパターンダイヤに近いです。約5分間隔の各駅停車と約5分間隔の速達列車が交互に運転されます。速達列車は通勤特急が15分間隔、急行が15分に2本(1本は相鉄始発、もう1本は横浜方面始発)です。相鉄線直通電車が合流する日吉からは各駅停車は自由が丘と祐天寺で速達列車を待ちます。速達列車は停車駅の違いこそありますが、お互いに追い抜きなどはありません。

7:56~9:08は渋谷行きはなく、新宿三丁目までは行きます。その先の行先や直通先は多岐に渡りますが、東横線のラッシュ時の混雑を考察する限りでは、深入りすることはないでしょう。

種別ごとの混雑率

上の章で最混雑時間帯が7:51~8:50と判明しました。では、その時間帯の混雑状況はどうでしょうか。現場で観察していると通勤特急は急行よりやや空いているように見え、急行直後の各駅停車より通勤特急直後の各駅停車はやや空いているように見えました。そのため、ここは分けて分析しました(表5、図2)。

表5. 東急東横線の混雑状況(祐天寺→中目黒、最混雑時間帯の種別ごとの混雑率)

図2. 東急東横線の混雑状況(祐天寺→中目黒、最混雑時間帯の種別ごとの混雑率)

やはり、通勤特急は急行よりもやや空いており、通勤特急直後の各駅停車は他の各駅停車よりやや混んでいました。それでも、速達列車と各駅停車の混雑率の違いは大きく、速達列車は各駅停車よりも混んでいる傾向です。

これは朝ラッシュ時の東横線ダイヤを眺めればわかります。各駅停車は祐天寺で後の速達列車を待ち、自由が丘から中目黒や渋谷に向かうには速達列車が先に着きます。それどころか、祐天寺の1つ手前の学芸大学でさえ、速達列車が先着します。あげくの果てはその1つ手前の都立大学(ここは各駅停車だけ停車)でさえ、次の学芸大学で降り、そこから急行に乗ることが可能です。全員が中目黒や渋谷方面への所要時間だけ考えた場合、各駅停車には祐天寺利用者しか乗らず、その1つ手前の学芸大学より遠い駅からの利用者全員が急行に乗るダイヤになっているのです。

ただし、通勤特急は学芸大学に停車せず、各駅停車から通勤特急の乗りかえが不可能です。したがって、通勤特急が運転されるタイミングでは都立大学と学芸大学利用者も各駅停車に乗ることが前提のダイヤとなっており、そのような意味で速達列車と各駅停車の混雑差がやや小さくなっています。

号車ごとの混雑率

では、どの車両が空いているのでしょうか。速達列車と各駅停車で混雑の傾向が異なるでしょうから、それぞれをまとめました(表6、図3)。

表6. 東急東横線の混雑状況(祐天寺→中目黒、最混雑時間帯の号車ごとの混雑率)

図3. 東急東横線の混雑状況(祐天寺→中目黒、最混雑時間帯の号車ごとの混雑率)

9号車と10号車は速達列車にしか存在しないので、全種別の混雑率と速達列車の混雑率が一致しています。基本的に前よりの車両がやや空いています。女性専用車両が先頭車にあるのも納得します。JRとの乗りかえは後方車両が便利ですので、後ろ寄りが混んでいます。渋谷の再開発が南側で進んでいる点もその理由となりましょう。

とはいえ、全体的に平均的に混んでいるというのが正しい表現でしょう。これは直通運転の隠れた効果です。直通運転すると、乗りかえなしで行ける駅が多くなります。いいかたを変えると、乗りかえ駅での階段の影響が小さくなります。特に、相鉄直通以降は相鉄線からホーム上で乗りかえが可能な駅が増えました。

東横線の混雑状況からダイヤ案を考える

写真8. 各社の制約などダイヤには考えることも多い(西武車は東武線や相鉄線には入れない)

2023年3月の相鉄直通以降、速達列車の割合が高くなり、10両編成が増えています。これにより、輸送力が高まっています。

2019年時点での状況と一変し、各駅停車が空いて速達列車が混んでいます。この大きな要因が祐天寺での待避です。確かに速達列車で運べることは事実で、速達性を重視し、祐天寺での待避が発生しているのでしょう。

ただし、相鉄線直通急行はかなり混雑しており、場合によっては学芸大学を通過する種別に変更しても良いでしょう。状況によっては速達列車の祐天寺での待避を放棄し、2023年ダイヤ以前の元住吉待避に復帰することも手です。速達性を重視するのであれば、通勤特急のみを祐天寺でも追い抜きする(中目黒断面で急行→通勤特急→各駅停車→各駅停車→急行の順序となる)ことです。

いずれにしても速達列車の速達性と輸送力が課題のダイヤです。自由が丘→中目黒が複々線であればこのような課題はかなり軽減されたでしょう。そのような意味で、鉄道は過去のインフラに大きな影響を受けることを改めて実感します。

参考:2019年時点の東急東横線ラッシュ時の混雑状況

東横線中目黒に到着するY500系

写真9. 2019年時点での様子

以下、長い文章を読みたくない人のために、簡単に結論をまとめます。

・通勤特急がダントツに混雑していて、ドア付近のみならず車内中ほども圧迫が見られるほど混雑している
・各駅停車はマシだが、ドア付近には圧迫が見られるほどには混雑している
・一番混むのは中目黒基準で7:50~8:50であり、8:20ごろの通勤特急が混雑のピークである

詳細は以下に示します。

混雑状況の生データ

まずは、各列車の各号車ごとの調査結果を示します(表7)。各列車の混雑率も示すことにしましょう。

表7. 東横東横線の平日朝ラッシュ時上りの混雑状況(祐天寺→中目黒)

東横線混雑状況(平日朝ラッシュ時、祐天寺→中目黒)

今回、初めて190ポイントという指標を使用しています。これは、座席前の乗客が前に倒れている(座席上の壁や窓に手を投げ出している)ため、180ポイントよりも混雑していると判断したためです。結果から述べると、最ピーク1時間の混雑率は156%でした。公式の発表は168%ですので、それなりにちゃんとした調査と考えています。調査したのが2月後半ですから、通常よりも2%程度空いている時期であることにご留意ください(※)。この補正があると私の調査結果からは160%程度となり、公式の記録とおおむね一致します。

※このあたりは3月に向けて通勤電車が空く理由に書きました。

一番混んでいるのは、8:20ごろに到着する通勤特急です。

混雑状況の分析

では、混雑状況を分析します。混雑ポイントは実は定性的評価です。定量的評価ではありません。もっと簡単にいうと、混雑ポイントは、数字と実際の乗車人数が比例関係にはありません。そのため、比例関係にある混雑率に換算して評価することにします。その後、再度混雑率に換算して定性的(わかりやすい言葉)に表現することにします。

※大手サイトを見ると、簡単に述べられていることが多いです。しかし、実際には始発駅、行先、種別、前列車間隔などで混雑がばらついています。この記事では安易に簡単に述べることはせずに、要因を詳しく分析します。

混雑ピーク時間帯の分析

私は100分調査しましたが、その中で最混雑時間帯はどこなのでしょうか。東横線は15分サイクルのパターンダイヤですので、その枠に当てはめて考えます(表8)。

表8. 時間帯ごとの混雑状況まとめ

東横線混雑状況(平日朝ラッシュ時、祐天寺→中目黒、時間帯層別)

単なる数字の羅列ではわけがわからないでしょうから、定性的な状態もまとめました。このデータを見ると中目黒着7:50~8:50の1時間が最ピーク60分とわかります。私の手元の都市交通年報(2010年度版)と一致していますので、私の考察は正しいのです!

種別ごとの混雑状況

種別ごとの混雑状況を示します(表4)。

表4. 種別ごとの混雑状況

東横線混雑状況(平日朝ラッシュ時、祐天寺→中目黒、時間帯と種別層別)

通勤特急が混雑しており、各駅停車は比較的余裕があることがわかります。とはいっても、「余裕のある」各駅停車であってもドア付近の圧迫が見られることは事実です。ましてや通勤特急になると座席前もある程度埋まり(=満員になって)きつい満員電車というのが現状です。急行はその中間です。

穴となる列車

では、ラッシュの前後も含めて全てが満員なのでしょうか。答えはNoであり、比較的混雑がましな列車があります。具体的には以下の各駅停車です。

・中目黒8:53発各駅停車渋谷行き
・中目黒9:01発各駅停車渋谷行き
・中目黒9:08発各駅停車和光市行き
・中目黒9:22発各駅停車渋谷行き

これらの電車を見たときに「空いている」と感じました。では、なぜ空いているのでしょうか。それがわからないとダイヤ改正された際に空いた電車を予想できません。最初に考えたのは渋谷行きだから空いているということです。しかし、この中には和光市行きもあります。よって、行先によって混雑に差があると考えるのは妥当ではありません。そこで、時刻表を眺めました。すると、これら4本の電車には祐天寺で後の急行なり通勤特急に抜かされるという共通点がありました。そう、祐天寺で通過待ちする各駅停車は空く傾向にあるのです。このため、ラッシュピーク1時間に祐天寺で通過待ちする各駅停車はありません。もしも通過待ちすると多くの乗客が速達列車に乗りかえてしまい、速達列車が今よりも混雑するためです。

また、ラッシュピーク時であっても、中目黒8:32発の各駅停車渋谷行きは比較的空いています。この各駅停車は中目黒で急行の待ち合わせをするために、多くの乗客が自由が丘で降りるためと推定できます。そのうえ、直前の急行が学芸大学の乗客を拾うこと、渋谷行きのため副都心線まで向かう乗客も避けることも指摘できます。他のラッシュピークの時間帯の各駅停車は急行の直後かつ渋谷行きという条件の電車はありません。この電車を新宿三丁目まで延長運転すれば、だいぶ混雑のバラつきは抑えられそうです(※)。

※調査が終わった後に中目黒から池袋まで乗車しましたが、渋谷と新宿三丁目で結構降りました。そのため、新宿三丁目まで行けば東横線からの通勤需要はおおむね満たされると推定します。

混雑状況からダイヤを考える~相鉄線からの流入を見越して

明らかに通勤特急が混雑しています。菊名と自由が丘で各駅停車と連絡する以上、これは当然です。また、現状でも混雑していますが、東急新横浜線が完成し相鉄線からの乗客が流入(直通がなくとも同一ホーム乗りかえができれば流入します)するとどうでしょう。公式には168%とされていますが、この数字が高くなることは簡単に想像できます。

ではどうすれば良いのでしょうか。答えの1つが各駅停車の一部を通勤特急に格上げすることです。各駅停車は8両編成、通勤特急は10両編成です。そのため、1本振り替えるごとに2両の輸送力増強が実現します。現在、15分の間に速達列車2本、各駅停車4本の割合ですが、それを速達列車3本、各駅停車3本とするのです。こうすれば、最ピーク1時間の間に8両の輸送力増強が実現します。たったの8両ですが、相鉄や新横浜方面からの流入の受け皿の1つにはなるでしょう。当然、8両だけでは流入する乗客の受け皿には足りませんが、メインは目黒線方面でしょうから、雀の涙程度の輸送力増強でまかなえることでしょう。

このように、人気が高くて直通予定があるために、東横線は将来も混む路線として地味に君臨することでしょう。この混雑を緩和するのが目黒線です。バイパス線として目黒線の輸送改善と地下鉄との直結を行っていた東急の先見の明には感心するものがあります。目黒線が目蒲線のままだったらと思うとゾッとしますね。

東急東横線の混雑関連のデータ

ここまで特定の駅での混雑調査結果という「狭くて深い」情報を提供してきました。では、混雑関連のデータをまとめたページのような「広くて浅い」情報を提供しているページはないのでしょうか。そのような声にお応えして、以下のページを用意いたしました。

東急東横線(混雑基本データ)

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