北鉄浅野川線の急行運転 | 京阪大津線の復興研究所

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大津線とは、京阪の京津線と石山坂本線の総称です。
この大津線の活性化策を考えることが当ブログの目的です。
そのために、京阪線や他社の例も積極的に取り上げます。

北陸鉄道のもう一つの路線である浅野川線には、かつて急行が運転されていました。廃止されたのは石川線の準急と同じく、2006(平成18)年12月1日です。

 

浅野川線の急行は昼間時に1時間毎で各駅停車と交互に運転され、上諸江・割出・三ツ屋・蚊爪に停車し、所要時間は14分でした。6駅余分に停まる各駅停車の所要時間は17分なので、1駅通過につき30秒しか短縮できていなかったことになります。

 

これは、同線が浅野川の蛇行に沿っているためカーブが多く、スピードを出せないことが影響していると考えられます。また、蚊爪―粟ヶ崎間にある大野川橋梁は老朽化のため15km/hの速度制限を受けます。石川線にも野町や新西金沢の付近に急カーブがありますが、全体としては比較的良好な線形です。

 

浅野川線の中間駅で交換可能なのは三ツ屋だけですが、北鉄金沢―三ツ谷間と三ツ谷―内灘の所要時間は各駅停車でも8~9分なので、30分毎の運転を前提とする限り、急行を混ぜなくても対応可能です。これは石川線の準急と異なるところです。

 

急行廃止前の2005(平成17)年に1日あたり4,093人だった浅野川線全体の利用客数は、翌年に4,110人と、わずかながら増加しています。石川線と違って沿線のほとんどが市街地化しているため、乗客をきめ細かく集める方策もそれなりに機能したのかもしれません。

 

ただ、2012(平成24)年には4,003人に後退しています。平均駅間距離0.6kmはさすがに供給過剰でしょう。

 

前回示した表を見ると、2006(平成18)年度のデータではありますが、やはり急行停車駅の乗降人員が多いことが分かります。中でも両端の北鉄金沢と内灘が突出しています。駅前にバスターミナルを持つのはこの2駅だけであり、集客力が文字通り桁違いに異なるのです。

 

全線を乗り通す利用客が多くの比重を占めるのは、ローカル線ではなかなか珍しいことです。例えば、立地が似ている富山ライトレールにはこれほど極端な傾向は見られません。

 

『内灘町統計書』によれば、内灘駅の1日の乗降人員は2012(平成24)年に2,212人まで減ったものの、その後増加に転じ、2017(平成29)年には2,572人に達しています。ここは、利便性を高めるために、約20分毎の運転と急行の復活が検討されるべきです。

 

全列車が各駅停車である場合、20分毎に運転するには北鉄金沢と内灘の折り返し時間を3分程度しか確保できず、遅れた場合の回復力に不安が残ります。

 

北鉄金沢は2線を擁しており、内灘も2026年度に1線から2線に増設する計画があるので、1番線と2番線を交互に使用すれば余裕をもって対応できますが、この場合は運用本数が増えてしまいます。

 

朝夕ラッシュ時は道路渋滞が起こりやすく鉄道の競争力が相対的に上がるため、運用本数を増やしてでも各駅停車を運転する価値がありますが、昼間時にそれを行うのは望ましくありません。

 

そこで、昼間時は各駅停車と急行をそれぞれ40分毎に交互に運転すれば、2本運用のままでも両端駅で4~5分の折り返し時間が生まれます。速達性もわずかながら向上し、金沢市と内灘町の都市間鉄道として恥ずかしくない水準に達します。

 

石川線の準急復活は、言わばマイナスをゼロに戻すための施策ですが、浅野川線の急行はゼロをプラスに転じさせる「攻め」の姿勢として重要な意味を持ちます。

 

なお、同じく所要時間が運転本数に影響を与えている例に、青森県の弘南鉄道の弘南線(弘前―黒石間16.8km)と大鰐線(大鰐―中央弘前間13.9km)が挙げられます。両線とも各駅停車の所要時間が28~29分なので、60分毎運転時は1回、30分毎運転時は2回の列車交換を余儀なくされる一方、両端駅での折り返し時間が非常に長くなっています。

かつて弘南線では最速23分、大鰐線では最速22分の快速が運転されていました。近年の各駅の乗降人員が公表されていないため具体的な提案はできませんが、利用客数や駅間距離に配慮し、停車駅をかつての快速並みに絞って所要時間を短縮すれば、交換1回で30分毎の運転が可能になり、効率が高まり競争力も向上します。

 

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