北鉄石川線の準急運転 | 京阪大津線の復興研究所

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大津線とは、京阪の京津線と石山坂本線の総称です。
この大津線の活性化策を考えることが当ブログの目的です。
そのために、京阪線や他社の例も積極的に取り上げます。

前回の記事で、神鉄粟生線の一部の駅の昼間時の営業を休止することを提案しましたが、これはあまりに突飛な意見であるとの印象を与えたかもしれません。しかし、かつて実際にそうした施策を行っていた事業者が存在するのです。それが、石川県の北陸鉄道です。

 

北陸鉄道は第2次大戦中に石川県下の私鉄を統合して生まれた会社です。当時は数多くの路線を擁していましたが、高度成長期以降のモータリゼーションに伴って次々と廃止されました。

 

現在は北鉄金沢から北の内灘へ延びる浅野川線6.8kmと、金沢市の都心の外れの野町から新西金沢を経て南の鶴来へ至る石川線13.8kmのみが存続しています。元が別会社なこともあり、両線はつながっていません。神鉄粟生線とは異なり、正真正銘のローカル線です。なお、石川線は鶴来から2.1km先の加賀一の宮まで延びていましたが、2009(平成21)年に廃止されました。

 

その石川線では、以前は昼間時の全列車が準急運転を行っていました。当初は、押野・野々市・曽谷・小柳を通過して加賀一の宮へ直通する「準急A」と、曽谷に追加停車して鶴来で折り返す「準急B」が合わせて30分毎に設定され、野町―鶴来間の所要時間は約25分でした。その後、1995(平成7)年3月のダイヤ改正で準急Bが準急Aに統合されています。

 

石川線の交換可能駅は新西金沢・額住宅前・道法寺・鶴来の4駅のみですが、準急は新西金沢―道法寺間を14分で走行し、それによって30分毎の運転を可能にしました。各駅停車は同区間で3駅余分に停車するので17分(2015年の陽羽里駅開業後は18分)を要し、30分間隔を維持できません。

 

このため、昼間時の全列車を準急化したのは極めて理にかなっていました。わずか3分の違いながら、意味するところは決して小さくなかったのです。

 

準急通過駅に曽谷と小柳が選ばれたのは周辺が田園地帯で人口が少ないからですが、押野と野々市は住宅密集地に位置します。にもかかわらず準急が通過するのは、所要時間の短縮と等間隔運転の維持を優先するためですが、都心へ直行するバスの利用が多いことも影響しています。

 

神鉄粟生線と神姫バスの関係とは異なり、北陸鉄道の場合はバスが同じ資本系列なので役割分担を図りやすく、野町は石川線とバスの結節点となっています。なお、同様の処置は長崎県の島原鉄道でも見られましたが、こちらは午前中に数本の急行が残っています。

 

ところが、北鉄石川線の準急は2006(平成18)年12月1日のダイヤ変更で全て各駅停車化されました。これに伴って押野・野々市・曽谷・小柳の停車列車が増加した反面、野町―鶴来間の所要時間は30~32分に延びました。

 

さらに、昼間時の交換駅が額住宅前に変更されましたが、各駅停車は額住宅前―鶴来間が最短16分なので30分サイクルが組めません。このため運転間隔が10分程度広がり、しかも正確な40分間隔ではないため、分かりにくいことこの上ないダイヤになってしまいました。

 

野町―額住宅前間は各駅停車で最短14分ですが、野町の2番線は線路が切られて架線も撤去されているため、1番線との交互使用はできません。復旧は可能ですが、それ相応の投資が求められます。

 

新西金沢で交換を行えば野町の改良は不要ですが、その場合は待ち時間が長くなり過ぎます。朝ラッシュ時には全ての交換駅を活用して各駅停車が20分毎に運転されますが、昼間時にこれを行うのは供給過剰です。

 

要するに、昼間時は30分毎の運転が適正であり、そのためには全列車が準急であることが前提だったのですが、各駅停車化によってそれが崩れてしまったのです。そこまでして押野・野々市・曽谷・小柳の乗車機会を増やす必要があったとは思えません。所要時間の5分増に待ち時間の10分増を足せば、15分もの無駄が生じることになります。

 

 

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