HSSTの活用 | 京阪大津線の復興研究所

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大津線とは、京阪の京津線と石山坂本線の総称です。
この大津線の活性化策を考えることが当ブログの目的です。
そのために、京阪線や他社の例も積極的に取り上げます。

HSSTとは、High Speed Surface Transportの略称であり、車輪を持たず電磁石で浮上してリニアモーターで推進する常電導磁気浮上式の交通機関のことです。日本航空が空港アクセス手段として1974(昭和49)年から開発を始め、1989(平成元)年からは名鉄や愛知県が資本参加して実現を目指してきました。

 

HSSTの車両は、鉄のレールをコの字型に抱き込み、電磁石がレールを真下から吸引する力と、重力とのバランスを保ちながら浮上を維持します。停車時や低速時にも浮上が可能であり、拙著【関西経済の復興計画(鉄道篇)】  で紹介した、リニア中央新幹線への導入が想定されている「超電導磁気浮上式」に比べて技術的に安定しています。

 

HSSTは、レールを抱き込む形になっているため安全性が高く、浮上式のため荷重がかからず軌道の建設コストや保守費用を下げることができます。また、摩擦力に頼らないため登坂力が高く、集電装置以外は非接触で摩耗が発生しにくいのも保守面で有利です。消費電力は鉄輪式の鉄道より大きいですが、モノレールや新交通システムとは大差ありません。

 

愛知高速交通東部丘陵線(リニモ)

 

HSSTは、2005(平成17)年3月に開業した愛知高速交通の東部丘陵線(愛称:リニモ)によって実用化されました。同線は、名古屋市営地下鉄東山線の藤が丘駅と愛知環状鉄道の八草駅を結ぶ路線です。営業距離は8.9 km、建設距離は9.15 kmで、途中に7駅を設けています。

 

開業からおよそ半年間は、愛知万博のアクセス輸送に活躍しました。万博の閉幕後は需要が激減し、長らく低空飛行が続きましたが、近年は増加に転じています。

 

リニモの総建設費は約997億円と発表されており、1kmあたりでは約109億円です。軌道に荷重がかからない分、建設コストを下げられるはずなのですが、この数字を見る限りでは、モノレール(100~150億円/km程度)や新交通システム(80~100億円/km程度)に対して優位に立てていません。ただ、藤が丘―はなみずき通間の1.4kmが地下線である点や、実用化第一号ゆえに既製品を使えなかった点などは割り引いて考える必要があります。

 

HSSTは原理的には300km/h運転も可能とされていますが、リニモは最高速度が100km/hに下げられました。それでも都市交通としてはトップクラスです。また、起動加速度は4.0km/h/s(1秒で時速4.0kmに達するの意)・減速度は4.5 km/h/sであり、拙著【高加減速車と多扉車の復興計画】 で取り上げた、鉄輪式では日本一の加減速性能を誇る阪神の各駅停車「ジェットカー」と同水準です。

 

阪神のジェットカーは、1kmの駅間で最高速度91km/hを出して1分で走破する性能を持っています。これと同等の性能ならば、駅での停車時間が20秒なら表定速度45km/h、30秒でも40km/hを維持できます。

 

しかし、リニモの全線の所要時間は17分であり、表定速度は31.4km/hに過ぎません。平均駅間距離は約1kmですが、全線の4分の1を占める藤が丘―はなみずき通―杁ヶ池公園間に急カーブが連続していることが災いしているようです。

 

今後、HSSTを新たに導入するならば、その高速性能を存分に発揮できるような路線を選定することが望まれます。都市内交通としては平均駅間距離が1km以上では不便なので、当初計画されていた空港アクセス輸送や、都市間輸送に活用することが考えられますが、後者については主要な都市間を鉄道がほぼ網羅しているので、新規参入の余地は小さいのが実情です。

 

その反面、都心から放射状に広がる鉄道と郊外側で連絡する外環状線的な路線は整備が遅れがちです。大阪モノレールや多摩都市モノレールなどがその役割を担っていますが、平均駅間距離も総延長も長いわりに表定速度が低いのがネックとなっています。

 

こうした路線の延伸計画や新設計画をHSSTで代替することを考えても良いのではないでしょうか。場合によっては急行運転や追い越し運転も行い、高速性能を生かすべきです。

 

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