「都市型索道」の可能性(追記あり) | 京阪大津線の復興研究所

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大津線とは、京阪の京津線と石山坂本線の総称です。
この大津線の活性化策を考えることが当ブログの目的です。
そのために、京阪線や他社の例も積極的に取り上げます。

索道とは、空中に架設されたロープにゴンドラを吊るして輸送するもので、一般にはロープウェイやリフトと呼ばれます。従来は主に観光用に用いられてきましたが、これを都市交通にも活用しようとする動きが見られます。

 

索道には様々な種類がありますが、都市型索道に適しているのは、2台のゴンドラが交互に行き交う「交走式普通索道」と、複数のゴンドラが停留所において自動的にロープをつかんだり放したりして循環する「単線自動循環式普通索道」です。

 

「交走式」は、ゴンドラの定員と速度、ロープの長さが輸送力に直結するので、比較的短い2点間を直結するのに向いています。ゴンドラの定員に決まりはなく、湯沢高原ロープウェイと竜王ロープウェイは最大定員166人と、電車1両分を上回ります。速度に関しては、びわ湖バレイロープウェイの秒速12m(43.2km/h)が現在の国内最速です。

 

対して「単線自動循環式」の速度は秒速5m以下と低いものの、発車間隔は「12秒以上」または「1.5秒×定員」のどちらか大きい時分に定められるため、待ち時間が短く、実質的な移動速度が速いのが特徴です。

 

「単線自動循環式」は中間駅の設置も可能であり、箱根ロープウェイは全長約4kmで途中2駅を設けています。箱根ロープウェイのゴンドラは18人乗りで、現在の発車間隔は最短45秒ですが、上記の基準に従えば27秒まで詰めることができ、その場合の輸送力は2,400人/hに達します。

 

ロープウェイの長所は、占有面積が少ないことです。用地が必要なのは駅部と支柱部のみであり、中間部における標準幅員は約7m、駅部で最小約12mに抑えることができます。ただし、日本ではロープウェイといえども走行路の真下の土地を所有または借用しなければなりません(生方良雄『特殊鉄道とロープウェイ』)。都市交通に応用するならば、道路や河川の上を通すのが妥当でしょう。

 

ロープウェイの支柱間隔は平均100m程度、最大で300m以上にすることも可能なので、河川を横断する場合などは他の交通機関に対して決定的に有利です。こうした特性から、ロープウェイの建設費は立体式の交通機関としては最安クラスの10~20億円/kmに収まります。例えば、新神戸ロープウェイ(現・神戸布引ロープウェイ)は1991(平成3)年の価格で14.2億円/kmでした(『新しい都市交通システム』山海堂)。

 

「単線自動循環式普通索道」の新神戸ロープウェイ

(現・神戸布引ロープウェイ)

 

ロープウェイの弱点は風に弱いことですが、ロープ(支曳索)を2本に増やし、ゴンドラの屋根から左右に突き出した握索装置でこれをつかむ「複式単線自動循環式」が実現したことで、風による運休を減らせるようになりました。この方式はフランス語の造語で「フニテル」とも呼ばれます。日本では2002(平成14)年に箱根ロープウェイが初めて導入し、各所の観光地に広まっています。

 

ロープウェイは現に山岳区間で多用されていることが示すように、急勾配に強く、40度(84%)にも対応可能とされています。

 

一方で、横方向の曲線を設けることは基本的に不可能であり、都市交通として用いる場合にはこれが最大のネックになります。駅部でロープ(支曳索)を放索・握索して方角を変えることは可能ですが、駅間は直線でなければなりません。この条件が許すならば、都市交通に導入する価値はあると思われます。

 

なお、都市交通としてロープウェイを用いるならば電灯と空調の搭載が不可欠であり、そのための車内電源をどう確保するかが課題です。ゴンドラにバッテリーを搭載して駅部で充電するか、もしくはロープと共に電線を配して集電する必要があるでしょう。

 

(追記)

博多駅と博多港を結ぶロープウェー構想が、福岡市の有識者会議で推奨されました。詳しくはリンク先でご確認ください。実現すれば、国内で初めての都市型索道が生まれることになります。

 

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