京阪間の虚像と実像 | 京阪大津線の復興研究所

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大津線とは、京阪の京津線と石山坂本線の総称です。
この大津線の活性化策を考えることが当ブログの目的です。
そのために、京阪線や他社の例も積極的に取り上げます。
なお、記事と無関係なコメントはご遠慮ください。

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『鉄道ピクトリアル』1998年12月増刊号では、京阪間直通輸送が「JRの一人勝ちになっているのではないでしょうか」という見解が示されていましたが、「阪急の減少は(年間)100万人程度ではないかと思います」とのことなので、1日あたりでは2,700人強の逸走に過ぎません。阪神間の「最大1.4万人減少」に比べれば減ったうちにも入らないほどです。

 

一方、京阪の直通客数は『鉄道ピクトリアル』1991年12月増刊号の「図-5 年間直通旅客の推移」に表されており、1990(平成2)年度の直通旅客は定期客が915万人、定期外客が828万人です。合計では1,743万人であり、1日平均では47,753人となります。

 

「図-5 年間直通旅客の推移」は折れ線グラフであり、旅客数が明記されているのは1990(平成2)年度だけですが、それ以前の1986(昭和61)年度から1989(平成元)年にかけての合計直通旅客はおよそ1,500万人前後で推移しており、1990(平成2)年度の伸びは際立っています。1989(平成元)年10月5日の三条―出町柳間の鴨東線開業の効果が見て取れます。

 

『鉄道ジャーナル』1995年11月号によれば、JRの京阪間直通客数が1989年度から1995年度にかけて「1.8倍を記録」したとのことですが、これが阪急や京阪からの転移を主因とするものでないことは上記のデータからして明白です。

 

「1.8倍」の主たる要因は、阪神間と同じく外縁部からの流入増加によるものと考えられます。特に、新快速の大半が直通する琵琶湖線の各駅は利用客の増加傾向が顕著です。中でも象徴的なのが、1994(平成6)年9月4日に瀬田駅と草津駅の間、京都駅から19.7km の地点に新設された南草津駅です。

 

1995(平成7)年度に1日あたり18,028人だった南草津駅の乗降人員(JR発表の乗車人員を二倍にしたもの。以下同じ)は増加の一途をたどりました。2006(平成18)年度には4万人を突破し、2011(平成23)年3月12日からは新快速も停車するようになっています。

 

そして、2014年(平成26)度には56,012人に達し、ついに草津駅を抜いて滋賀県内で第1位の乗降人員を数える駅となったのです。そのうち何人が京都を通り越して大阪まで乗り通しているのかは資料がないため知る由もありませんが、私鉄の影響力が及ばない外縁部でこういう駅が育っていることは確かです。

 

そもそも、話を京阪間に限れば、JRの競争力は国鉄時代からさほど向上していないのです。新快速は1972(昭和47)年3月15日のダイヤ改正で京都―大阪間29分、15分毎の運転をすでに実現しており、国鉄最後のダイヤ改正である1986(昭和61)年11月1日の時点では新大阪のみの停車で、運賃は510円でした。

 

一方、当時の阪急は河原町―梅田間で烏丸・大宮・十三停車の特急が39分・300円、京阪は三条―淀屋橋間で四条・七条・京橋・天満橋・北浜停車の特急が46分・310円で、いずれも15分毎でした。

 

現在の新快速は最高速度が130km/hに引き上げられたものの、高槻が停車駅に加わったため、時刻表上で上り29分、下り28分と、国鉄時代とほぼ同じです。運賃はJR化後に値上げが抑制されたため580円に留まっており、並行私鉄との格差は縮まっていますが、『鉄道ジャーナル』が説いてやまない「速さ」はほとんど変化がありません。

 

対する阪急の特急は大宮通過の代わりに桂・長岡天神・高槻市・茨木市・淡路が停車駅に加わり、河原町―梅田間は42分・410円、京阪の特急は出町柳延長の上で丹波橋・中書島・樟葉・枚方市にも停まり、三条―淀屋橋間は50分・430円です。

 

よって、新快速が相対的に速くなっているのは事実ですが、阪急と京阪は昼間の京阪間先着列車を毎時6本に増発して待ち時間を短縮しているため、一概に遅くなったとは言えません。

 

さらに近年は、阪急・京阪とも京都観光に合わせて「快速特急」を設定しています。阪急の快速特急は特急の直後を続行運転で走るためダイヤ上の存在意義はほとんどありませんが、京阪の「洛楽」はかつての特急と同じく七条―京橋間ノンストップで平日2往復・土休日5往復が設定され、三条―淀屋橋間の所要時間を45分に縮めています。

 

 

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